ニューヨーク市セントラルパークに臨時に設営された野営病院。日本もいずれこうなる?(撮影=Jimin Kim)
ニューヨーク市セントラルパークに臨時に設営された野営病院。日本もいずれこうなる?(撮影=Jimin Kim)

 新型コロナウイルスが猛威を振うなか、感染を調べるPCR検査が「狭き門」である状況に変わりはない。医療現場では検査が不十分なことから感染者がわからず、院内感染が危惧される。いま、患者はもちろん医療現場でも困惑が広がっている。

 混乱する医療現場には疑心暗鬼が広がり、患者のたらい回しが起きている。

 実際に「たらい回し」を体験したのが都内在住の会社員Bさん(30代)。自宅療養を始めて1カ月。37度程度の熱が続くためコロナ感染の疑いが消えず、出社できない状況が続いている。

「異変を感じたのは3月4日。目に痛がゆさがあり、倦怠感、寒気、肺にも締め付けられる感覚がありました。翌日から下痢が止まらなくなりました」(Bさん)

 保健所からは近くの診療所での受診を勧められ、最寄りのクリニックへ。X線検査と血液検査を受けたが、肺炎とは診断されなかった。

「不安でPCR検査を頼みましたが、医師は『できません』の一点張り。『自宅待機か仕事に行くかは、ご自身で判断ください』『症状が悪化するようなら再度受診を』と突き放されました」(同)

 結局、自宅待機を決断したが10日以上経っても熱は下がらず、下痢も悪化。保健所に相談して同じクリニックに電話すると「同じ検査しかできないので」と、あっさり診療拒否された。再度保健所に相談して受診した別のクリニックでも、CT検査で肺炎の症状が見られなかったため、それ以上の検査はなし。医師には「これ以上何もできないので保健所に問い合わせて」と冷たく告げられた。

「保健所の職員は申し訳なさそうに『よほど重篤な肺炎でもない限り検査の案内もできないことになっています』と言っていた。20日間も体調不良が続くこと自体が異常なのに、かたくなに検査拒否。病気も特定できず、いつ体調が戻るのか見当もつかないので、本当に困っています」(同)

 こうした証言からも、PCR検査の「狭き門」に医師も患者も困惑している実態が浮かび上がってくる。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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