内田:「コロナと共生する世界」ですね。そういう世界において医療崩壊を起こさずにするためにはどうすればいいんでしょう。

岩田:シンプルに諦める、というのが一つの解です。

内田:なるほど……。罹っても病院に行かない、と。

岩田:ワクチンが開発されない限り、行っても薬はないですからね。ただ中国や韓国のように、努力によって抑え込むというシナリオも当然ありえます。

──4月3日対談場所となった内田氏の合気道道場「凱風館」には、聴講生が互いに距離を空けながら耳を傾けていた。その一人が内田氏に「スペイン風邪(1918年)の流行後、関東大震災や世界恐慌が起きて日本では社会不安が高まり、太平洋戦争へと突き進んだ。ポスト・コロナをどう予想するか」と尋ねた。

内田:それほど悲観的な予想はしていません。仮に今後大地震が起きたり、大恐慌が起きても、戦前のような破局的な展開にはならないと思います。1918年の日本は、人口約6千万人、今の半分でしたが、人口構成は完全なピラミッド型で、国民の平均年齢が今より圧倒的に若かった。若い国だからこそ「世界的大国になる」という野心もあった。そもそも戦争ができるというのは、徴兵できる若者がいるということです。しかし、中央年齢が48.9歳、世界で最も高齢化が進んでいる現在の日本に戦争をする体力はありません。

岩田:ありませんね。

内田:かつての日本なら「コロナを殲滅する」というシナリオA以外思いつかなかったでしょう。でも、100年後の僕らは、限りある資源を活用し、適切に分配しながら、「未知の感染症と気まずく共生しつつ、負け幅を何とか小さくする」という後退戦のシナリオの方が現実的だと思います。

(文・構成/大越裕)

AERA 2020年4月20日号より抜粋