凸版印刷の新人研修。新入社員約20人に対し、1人の先輩トレーナーがサポート。オンライン研修による不安の解消につなげる(撮影/写真部・小黒冴夏)
凸版印刷の新人研修。新入社員約20人に対し、1人の先輩トレーナーがサポート。オンライン研修による不安の解消につなげる(撮影/写真部・小黒冴夏)

 新型コロナウイルスの感染拡大は、新社会人たちにも大きな影響をもたらした。対面での企業研修がオンライン化されたこともその一つだ。人事担当者の工夫、リアルとの違い、そして新入社員の反応とは。テレワークを特集したAERA2020年4月20日号から。

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 コロナ感染が拡大した今年4月に入社した新入社員は、オンライン入社式や研修のため一度も同期や先輩の顔を見ていないという人もいる。心理的な距離もあるバーチャル上で、いかに社会人としての常識や、社員としての一体感を養うのか。人事担当者は工夫を凝らしている。

「聞こえますかー?」

 先輩社員がパソコン越しに話しかけているのは、北海道から沖縄まで、全国各地の自宅からiPadを通じて研修に参加する新入社員たちだ。聞こえずに首を傾げたり手でバツを描いたりすると、すぐさま先輩社員が電話をかけフォローする。

 凸版印刷では新型コロナ感染拡大を受け、創業以来初となるオンラインでのリモート新人研修を実施した。417人の新入社員を約60人ずつ七つの班に分け、先輩社員が3人ずつトレーナーとして付く。トレーナーは本社会議室のパソコンから、テレビ会議アプリ「Zoom(ズーム)」で新入社員をフォローする。

 この日は、班でトレーナーや同期と交流する「コミュニケーションワーク」を初めて実施。

 ズームのグループ分けができる機能を用い、60人の班をさらに4人程度のグループに分け、自己紹介を行った。数分ごとにメンバーをシャッフルし、50分間じっくり話した。

「近所におすすめの場所はある?」「バイトは何をやっていたの?」などと、トレーナーもグループに参加し話を盛り上げる。時折、リラックスした笑い声も聞こえてきた。

「在宅だと、どうしても同期間や先輩とのつながりが薄れがち。初日はあえて自己紹介の時間を長く設定しました。やる前は心配もありましたが、うまくいっているようですね」

 ほっとした表情でこう語るのは、研修を担当する山田浩司さん(32)だ。2月20日、半年以上かけて準備してきた新人研修がリモート実施になるかもしれないと上司から聞かされた時は「一瞬、頭がホワイトアウトした」。しかし、感染拡大状況に応じた7パターンの研修プランを1週間でとりまとめ、トレーナー社員へのマニュアルもオンライン研修に対応して見直した。

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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