ここで思い出すのは、故橋本治氏の著作『桃尻語訳枕草子』だ。氏は「春はあけぼの」を「春って曙よ!」と、「いとをかし」を「すっごく素敵!」と置き換えた。
「素敵」だったり、「ちょーかわいい」だったり、「尊い」だったり、SNSの「いいね」だったり、時代によって表現は変われども、いつだって人々の心の中に「いとをかし」気分は存在するのだ。
もしも現代に清少納言がいたら、カリスマブロガーでインフルエンサーで、フォロワー数は100万人超え。広告会社がほうっておかないだろう。
光の君は「抱かれたい男第1位」で、「anan」のSEX特集の表紙をヌードで飾るにちがいない。もちろん紫式部は、直木賞の選考委員をやってるはず。
ドラマでは意外と現代への適応能力が高い光の君だけど、人の心の核の部分って千年たってもたいして変わらないのかもしれない。
だからとりあえず今は光の君を見習って、腰に手を当てスックと立ち上がり、ソロリソロリと静かに歩み、感動した時は迷わず五七五七七で歌ってみる。
※週刊朝日 2020年5月1日号

