森の学校の設立を記念して、ピアノとチェロの生演奏と共にニコルさんが詩を読んだ。

「学校は津波で破壊された。海はもうそばまで迫ってきた。子供も先生もいない。寂しいな。ずっと向うの海の上。白鳥の群れが飛んでくる。学校の真上を通って、美しいたくましい羽根で風を切る。ぴゅう、ぴゅう、ぴゅう。白鳥が帰ってきた。もう寂しくない。(略)ほとんどの家はめちゃくちゃに壊された。(略)マッチ箱のように木っ端みじん。(略)津波の力は恐ろしい。なんて悲しいことだ。その家の家族のみんなはどうなったかな。寂しいな。でもこの間同じ街を歩いた。日本一のカキフライ定食をご馳走になった。もう寂しくない。(略)貧弱な木々を切り出して藪を刈った。下まで光が通ると春に花がいっぱい咲いた。小鳥のさえずり。カエルの合唱団。暗かった森が明るくなって賑やかになった。(略)新しい学校ができた。光と杉の木の香りでいっぱい。とっても楽しい学校だ。子供たちの笑い声が学校中響き渡る。それを聴いている森の小鳥たちも間違いなく喜んでいる。寂しい、悲しい、辛いことがたくさんあった。でも、子供の笑い、小鳥のさえずり、海の風と共に飛んでいく。もう寂しくない」

大きな体を折り曲げるようにして、子供たちと森を想う詩を読んだニコルさん。心よりお悔やみ申し上げます。彼が出演された番組はポッドキャストで聴くことができます。興味のある方は「いのちの森~voice of forest」公式サイトをチェックしてみて下さい。

週刊朝日  2020年5月1日号

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