TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は、先日亡くなったC・W・ニコルさんについて。
* * *
作家で環境保護活動家、イギリス・ウェールズ生まれのC・W・ニコルさんが亡くなった。享年79。ニコルさんにはラジオ番組「いのちの森~voice of forest」(フルネット。TFMでは毎週日曜5:30~)で多くの話を伺い、長野県・黒姫山麓での森づくり(アファンの森)など、その活動を継続的に紹介してきた。
自然と汗と愛情。これがあれば復興する。そんな思いで東日本大震災の被災地、宮城県東松島市に立ち上げたのが「森の学校」。ニコルさんのこだわりは「多様性」。多様性(バイオ・ダイバーシティ)は可能性と同義語だというニコルさんの取材を続けた番組ディレクターは、ニコルさんがその多様性を「森の音が変わる」と表現していたと言う。
「丁寧に間伐すれば、音が通るようになる。独特の音がある。(森は)本当に良い音のスタジオになるんだ。鳥が啼き、動物が鳴く。森は音楽が大好き。ワイワイワイワイと喜ぶ音が聴こえる」
ニコルさんの言葉に目を閉じ、耳を澄ますと、360度の涼やかなサラウンドで森の音が聴こえ、彼女はその音を収録してフルネットのラジオ番組で放送した。
森の学校地鎮祭には地元・東松島市の神主さんがいらして、榊と水、塩を供えた。紅白の幕に囲まれ、長靴姿のニコルさんの後ろで僕らも頭を垂れた。
「これを持ってごらん」と、地鎮祭の後、ニコルさんが僕に一本の小枝を差し出した。
「あれ? あ、あ、あ……」小枝を持つなり枝が僕を勢いよく地下に引っ張っていく。
「君は選ばれし者だね」とニコルさんが笑った。「反応しない人も多いんだ」
ニコルさん曰く、この森には以前小川が流れていた。今は忘れ去られているけど、地下を流れる水脈が君の身体を引っ張っている。手にしている小枝はそのアンテナの役目なのだと。そういう現象を、ニコルさんは故郷のウェールズで学んだのだそうだ。