「コンビニ百里の道をゆく」は、50歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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習慣にしていることのひとつに「対話」があります。
社内会議はもちろん、時には社を出てお酒を交えながらも話します。
私から声を掛けて、お店と向き合っている現場の社員や若手社員とカジュアルな場で集まることもよくあります。
ざっくばらんに話を聞きたいと思うときは、格式ばらずに商店街の中華料理店や居酒屋でひざを突き合わせる。
そうすると、普段は聞こえてこない「声」に気づけるのです。
最初の30分ぐらいはお酒を飲まず、話します。皆どことなく遠慮がちですが、話が一巡すると、少しずつ普段思っていることを口にし始める。
直属の上司には言えないことでも、なぜか社長には言いやすい、ということもあるようです。
若手社員の中には、改革や制度変更について率直に意見する人もいて、良いことだと思っています。
こうした場での「違うんです」という「声」は、本質を捉えていることがほとんどです。問題意識は立場によっても異なり、上位者になるほど物事を抱え込んでしまう傾向があるようです。
ある若手社員から、「支店長補佐が大変そうだ」という意見が上がったときは、それをヒントに、支店長補佐の働き方を変えることができました。
他にも対話による気づきはあります。
たとえば、「ローソンが目指す姿」というような、私にとっては様々な場所で何度も話した内容であっても、相手は1度しか聞いていないこともある。
大切なことほど、しっかり届くよう何度でも伝えていかなければ、と再認識できました。
新型コロナウイルスの感染拡大が進み、大変な日々が続く今だからこそ、さらに現場の「声」に耳を傾けていかなくてはと考えています。
※AERA 2020年5月4日-11日合併増大号