4月20日、IOC(国際オリンピック委員会)は、そのホームページに、東京五輪を1年延期するためのコストについて、「安倍首相は、2020年に向けて取り決められた既存の負担割合に応じ、引き続き日本が割り当てられた費用を負担することに合意した」などと掲載した。これに対し、日本政府は、「そんなことは何も決まっていない!」と猛反発してみせた。
元々五輪予算1兆3500億円のうち、IOCの負担は850億円で、全体のわずか6%強だ。1年延期のための費用は約3千億円とされるが、IOCに従来の割合を極端に超えて支払えと言える理由は特にない。しかも、小池百合子都知事、安倍晋三総理ともに五輪中止の選択肢はなく、交渉上の立場は弱い。そう考えると、IOCが巨額負担をする可能性はなく、IOCの発表は常識的なものだったと考えられる。
では、なぜ、政府はここまで大騒ぎをしたのか。
現在最もホットな話題は、休業支援をはじめとした「コロナ禍」で苦しむ人々への支援策だ。政府は1人10万円給付実施のために補正予算の閣議決定をやり直すという大失態に追い込まれたが、それでもなお、まだ足りないという声が高まっている。
そこで心配になるのが、「五輪延期に3千億円もかけるのか!」という批判と「五輪なんか中止しろ」という声の高まりだ。休業補償などの議論にこの声が重なると非常に危険だ。だから、この時期に五輪延期コストが巨額になるということを国民に意識させたくなかったのではないか。
ここへ来て、世界中で新型コロナウイルスの終息には1年半から2年程度かかるという予測が出始めた。五輪は中止せざるを得ず、3千億円は結局ムダ金になるのではないかという懸念は高まるはずだ。
来春、おそらく、安倍総理はこう言うつもりだったのではないだろうか。
「新型コロナウイルスについてお案じの向きには私から保証いたします。状況は統御されています(アンダーコントロール)。東京にはいかなる悪影響も及ぼすことはありません!」