政府が新型コロナウイルス対策として、日本の全世帯約5000万世帯を対象に1住所あたり2枚の布製マスクを配布している「アベノマスク」が、物議を醸している。
安倍首相が国会での答弁で、「布製マスクは使い捨てではなく、再利用可能であることから、急激に拡大しているマスク需要に対応するうえで非常に有効であり、また、サージカルマスク等を医療現場に優先して供給するためにも家庭向け布マスクの配布を行うことは理に適った方策と考えています」と自賛する肝いりの政策だったが、早くもつまずいた。
4月17日から全戸配布が始まったが、これに先行して配布が始まっていた妊婦向けの布マスクについて、虫や髪の毛の混入、カビの付着や縫製のミスがあるなどの「不良品」が次々と発見されたのだ。全戸配布用からも検品中に同様の問題事例が約200件見つかったという。
政府が公表した情報などによれば、アベノマスクの発注先は興和(契約額54.8億円)、伊藤忠商事(同28.5億円)、マツオカコーポレーション(同7.6億円)、ユースビオ(同4.7億円)、横井定(契約金額不明)の5社。ユースビオはベトナムで生産した布製マスクを1枚135円で350万枚、政府に納入したことがわかっている。だが、それ以外の4社は、生産地は海外であるとされているものの、1枚あたりの単価や生産枚数は公表していない。
政府はアベノマスの配布に掛かる費用を466億円と算定していた。だが、4社の契約金額の合計は95億円ほどだ。配送を請け負う日本郵政の受注額は26億円で、合計121億円。ここまで大きな差額が生じていることも不可解だが、本誌が入手した資料からも、さらなる“謎”が浮上した。
4月8日、発注先5社のうちの一つであるA社の従業員N氏から、繊維業がさかんな東海地方のアパレル関連会社に送信されたメールがある。
<御社及び外注縫製工場を含め、ガーゼマスクの縫製にご協力いただけませんでしょうか?>
<加工賃ですが、政府向けの仕事なので、正直申し上げますが¥80円/枚以下です>
などと記され、アベノマスク製造、加工について、細かな仕様書が添付されていた。