大人は思いつかないような、子どもの素朴な疑問や不思議。子どもの頃から、納得できる答えが得られないままになっていること。そんな質問に、テレビやラジオなどでも活躍する明治大学教授の石川幹人(まさと)さんがお答えします。ジャンルを問わず、答えが見つからない質問をお寄せください!(https://publications.asahi.com/kodomo_gimon/)。採用された方には、本連載にて石川幹人さんが、どこまでもまじめに、おこたえします(撮影/写真部・掛祥葉子)
大人は思いつかないような、子どもの素朴な疑問や不思議。子どもの頃から、納得できる答えが得られないままになっていること。そんな質問に、テレビやラジオなどでも活躍する明治大学教授の石川幹人(まさと)さんがお答えします。ジャンルを問わず、答えが見つからない質問をお寄せください!(https://publications.asahi.com/kodomo_gimon/)。採用された方には、本連載にて石川幹人さんが、どこまでもまじめに、おこたえします(撮影/写真部・掛祥葉子)
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※写真はイメージです(Getty Images)
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 発想豊かな子どもの疑問に大学教授が本気で答える連載「子どもの疑問に学者が本気で答えます」の番外編。新型コロナウイルスに関連した子どもたちの疑問に答えます。ウイルスが人間以外の動物から発生することが多いのはなぜなのか、明治大学教授の石川幹人さんが答えてくれました。

*  *  *

【Q】ウイルスは人間以外の動物から来るそうですが本当ですか?

【A】凶暴なウイルスは人間以外の動物からくることが多いと言えます。

 ウイルスは、生物の遺伝情報をもった化学物質がたまたまちぎれ、ごくわずかな断片になったものがタンパク質や脂から出来た「カプセル」に包まれたかたちをしています。

 生物の細胞にウイルスがうまく付着できれば細胞内に侵入でき、その生物の遺伝情報の中にウイルスの断片情報が入りこみます。すると、生物の体をつくるはずの遺伝情報が変更され、感染細胞はウイルスの生産工場と化します。

 しかし、感染細胞の遺伝情報にウイルスの断片情報が入っても、増殖のきっかけとなる信号が生じずに増殖しないこともあります。もともとウイルスは、宿主細胞の遺伝情報の一部がちぎれて運ばれただけであり、増殖はしないものだったのかもしれません。増殖するウイルスばかりが広まって目立つので、「ウイルスは増殖するもの」と見られがちなのです。

 増殖するウイルスには種類があり、侵入できる細胞も、ひき起こす病気の種類も異なります。傷口から皮膚の細胞に侵入して増殖するウイルスは「イボ」を形成しますし、のどから肺の細胞に侵入して増殖するウイルスは「肺炎」をひき起こします。現在、世界中で猛威を奮っている新型コロナウイルスも、毎年私たちを悩ませるインフルエンザウイルスも、肺炎を起こすウイルスです。

 イボを見たことがありますか。イボは、ウイルスに感染した細胞がたまって膨らんだものです。正常な皮膚は、表面の細胞が死んで「角質化」し、内部の組織を外敵から守っています。お風呂で体を洗って出てくるアカは、役割を終えた皮膚細胞の「死骸」です。

 イボの感染細胞も同じように死んでアカになってくれればいいのですが、「死ぬ仕組み」そのものも感染によって破壊されて機能しなくなってしまうので、感染細胞が排除されにくくなり蓄積されてしまうのです。そこでイボでは、感染細胞を物理的に取り除く治療が行われます。

 このように感染細胞は本来の機能を失ってしまうので、もともとの細胞が担っている機能が、人体にとって重要であればあるほど、病気は重くなります。イボで死ぬことはないでしょうが、肺炎が進むと呼吸困難で死んでしまうことは多いです。

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ウイルスは本来、重症化させない?