今やらなければいけないのは、院内感染対策と、現状の正確な理解です。公衆衛生というよりは、国民サービスの視点で対応に当たらなければ、収束させることは難しいでしょう。

●感染のリスク減らすには顔を触らない
大谷義夫さん(56)池袋大谷クリニック院長

 新型コロナウイルスの感染拡大がいつ鎮まるのか、現時点では全く見えません。このウイルスの主な感染経路は、飛沫感染と接触感染。外出を自粛して濃厚接触を極力減らすことで、飛沫感染はある程度抑えられるでしょう。それを前提としたうえで、究極の対策は、顔を触らない。特に、目、鼻、口を触らないことだと考えています。

 みなさん、この認識がまだまだ甘い。クリニックにいらっしゃる患者さんも、「感染しないか心配」と言いながら、目をかいたり、鼻をこすったりしています。これでは、接触感染を自ら招いているようなものです。

 マスクもアルコール消毒液も品薄が続いています。同じマスクを何日間も、場合によっては洗っては干し、使い続けざるを得ない。私はこれまで「一度マスクを外したら、捨てて新しいものに取り換える」「一日中同じものを使い続けない」「マスクの表面は触らず、耳のゴム部分だけを持ってつけ外しをする」などとお伝えしてきましたが、今はやりたくてもできません。

 アルコール消毒液もやはり手に入りづらい。たとえあっても、手を洗い、アルコール消毒液で除菌した後に、何かを触れば、ウイルスが手に付着してしまうのです。新型コロナウイルスはプラスチックやステンレスの表面では2、3日生存するという報告もあります。ドアノブや手すり、スマートフォンやパソコンをずっと触らずにいることは不可能。だからこそ、手で顔を触らない。接触感染のリスクを減らすことが重要なのです。

 私は長年の習慣で、顔を触らない癖が身についています。目や鼻がかゆいと思ったら、ティッシュを使います。多くの人が顔を触らない習慣を身につければ、感染拡大の勢いも弱まるのではないでしょうか。これは風邪やインフルエンザなどすべての感染症対策にも役立ちます。

(構成/編集部・小田健司、ライター・羽根田真智)

AERA 2020年5月4日-11日号