■データの読み方と病院選び
眼科の診療は、六つの専門領域(角結膜、緑内障、白内障、網膜硝子体・ぶどう膜、屈折矯正・弱視・斜視、神経眼科・眼窩・眼附属器)に大別されており、同じ眼科医でも専門が異なる場合がある。そのため、本誌は日本眼科学会が認定する専門医研修施設を対象に調査を実施した。専門医研修施設には6領域の専門医がいることが認定条件となっているからだ。
「術後の合併症などを含め、さまざまなケースに対応するためには病院としての総合力が求められます。とくに、網膜硝子体手術は、眼の全てを知る医師でないと難度の高い手術に対応できず、幅広い知識と技術、診断力が求められます」(寺崎医師)
データでは、網膜硝子体手術の総数、内訳として網膜剥離の硝子体手術と強膜バックリング手術、増殖糖尿病網膜症の手術の数を掲載している。強膜バックリング手術とは、網膜剥離の手術法の一つ。強膜の上からスポンジを巻くなどして網膜を押さえる方法で、若年者には有効だ。
手術数が多いことは病院の技術力の高さを示す指標のひとつになると寺崎医師は言う。
「ただし、網膜硝子体手術には比較的容易なものもあれば難度の高いものもあります。内訳として示されている手術はいずれも技術を要する手術のため、『手術総数』と『内訳の数』のバランスもみるといいでしょう。また、医師の数が多ければ一人の医師の経験は少ない可能性も。基本的な技術力を示す目安として、1人の医師が年間100件していればまずまずと考えられますが、病院のバックアップ態勢も重要です」
緑内障や白内障でも、「手術数はいい病院の指標になる」と相原医師は言う。
「手術数が多いということは、それ以上に薬物治療を受ける患者も診ており、多くの症例を経験していると考えられます。また、緑内障の手術にはいくつかの方法があり、線維柱帯切除術(濾過手術)は重症の緑内障におこなわれる難度の高い手術のため、この手術を多くおこなっているところは技術力の高い病院と考えられるでしょう」
網膜や黄斑部の病気には、早急な処置が必要なこともある。
かかりつけ医で対応できない場合は専門医のいる病院を紹介されるが、症状が見逃されて対応が遅れることもあると寺崎医師は指摘する。
「急激に視力が落ちた場合や視野が狭くなった場合などは緊急に対応が必要なことがあるため、網膜専門分野の医師がいる病院か、専門的な治療が受けられる病院と連携している病院を受診しましょう」
(文/出村真理子)
≪取材した医師≫
名古屋大学病院 眼科教授 寺崎浩子 医師
東京大学病院 眼科教授 相原 一 医師
※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』より