ホームレスが殺害された現場(C)朝日新聞社
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 岐阜市で路上生活者(ホームレス)の男性が殺害され、朝日大学(岐阜県瑞穂市)の現役の硬式野球部員2人を含む少年5人が殺人や傷害致死の疑いで逮捕された事件が波紋を広げている。

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 岐阜県警は4月25日、会社員の少年1人と無職の少年2人を殺人容疑で、朝日大学の男子学生2人を傷害致死容疑で逮捕、起訴。いずれも岐阜県内に住む友人同士で、中学、高校で野球を通して知り合い、甲子園出場経験のある強豪高校の出身者もいるという。

 ホームレスの男性らは3月中旬以降、事件当日以外にも4回ほど石を投げられる被害に遭い、岐阜北署に相談していた。

 逮捕された野球部員ら容疑者は全員、未成年だったため、実名などは公表されていないが、インターネット上では個人情報を晒されている事態になっている。

 この事件は3月25日未明に起きた。5人の容疑者が岐阜市河渡の河渡橋西詰めから同市寺田の路上までの間、男性に石を投げつけるなど暴行。殺人容疑で逮捕された3人は約1キロにわたって男性を追い回し、後頭部に強い打撃を加えて殺害した。

 このニュースを受けて、インターネット上の「特定班」は様々な情報を集めて逮捕された5人の少年らの身元を調べ上げておまとめサイトなどで公開。だが、憶測で書かれた情報も多く、事件に関与していない無実の朝日大学の野球部員を誹謗中傷する事態に発展した。

 同大野球部1年のある部員は「こいつが犯人です」と実名をネット上で書き込まれた。根も葉もないデマがあたかも事実として、ネット上で拡散されていく。その部員のSNSのダイレクトメールに、面識のない人間から「死ね」と書かれた文面が送られてきたため、その部員は両親と相談し、事実無根の書き込みを行った投稿者に削除要請を出した。投稿者が応じない場合は名誉棄損で訴訟することを検討しているという。

 この野球部員から相談を受けた知人の指導者は憤りを隠さず、本誌の取材に対し、こう声を震わせた。

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指導者が明かす実情