外出自粛を受けて東京都心が閑散とする中、昭和の時代から愛されてきた名店も窮地に立たされている。本誌はコロナ禍に耐え忍ぶ名店を応援したい。洋食の「入舟」を紹介する。
* * *
食材の質を変えることは、店の味を変えることに直結する。しかし店主の松尾信彦さんは、15年ほど前に見直しを行った。メニューはそのまま、食材を変えて味を良くできないかと考えたのだ。
「築地で海老を扱う業者から、『これを使ってみたら』と強く勧められたのが、ニューカレドニア産の『天使の海老』という品種です。それまで使っていたブラックタイガーとは仕入れ値が違いすぎるので断ったんですが、向こうは1年くらい勧め続けて。根負けして一回だけ仕入れて出してみたら、常連さんから大変好評だったんです」
逡巡の末、料理の値段を変えずに高価な海老を使うことにした。
「これが有名になって数が出れば、もとが取れると思ったんです。評判を聞いて遠くから食べに来る方もいらして。成功だったと思います」
天使の海老のフライは、味噌がたっぷり入っていて、香りが良い。まろやかな甘みがあり、頭から尻尾までおいしくいただけた。
(取材・文/本誌・菊地武顕)
「入舟」品川区南大井3‐18‐5/営業時間:11:30~13:30L.O.17:00~20:30L.O./定休日:日。祝に休むことも
※この時期の営業日・時間については、お店にお問い合わせください
※週刊朝日 2020年5月8‐15日合併号