緊急事態宣言による外出自粛の影響から、飲食店は存亡の危機に追い込まれている。昭和時代から愛される東京の名店も例外ではない。令和でもその味を守り続ける名店を応援したい。豊洲に移った仲卸業者が今でも通い続ける築地の「本種(もとだね)」を紹介する。
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築地場外にある店に取材に訪れたところ、刺身をつまみにうまそうに酒を飲む客がいた。40年も働く仲卸業者だそうで、こう語った。
「(市場が)豊洲に移ってからも食べに来てるよ。腕がいいからさ。それと顔。いい魚を持っていっちゃうんだよ、顔で(笑)」
20年以上の付き合いだという、鮪専門の仲卸業者もやって来た。
「値段の割にいいってのをちゃんと見つけるからねえ。この値段でこれだけの魚はなかなか食えないよ」
魚のプロから褒められて、店主・本種博さんはちょっと照れ気味。
「移転する前はさ、市場で仕事を終えた人たちがたくさんやって来てね。昼から一升瓶抱えて飲んでいたもんですよ。うちは寿司屋じゃない。寿司も出す飲み屋だから(笑)」
当初は焼き魚中心の定食屋だった。やがて余った魚でちらし寿司を出したら好評。握ったら、さらに評判を呼んだ。17歳から寿司屋で働いてきただけに、「飲み屋」のレベルではない。毎朝焼いている玉子も美味。(取材・文/本誌・菊地武顕)
(取材・文/本誌・菊地武顕)
「本種」中央区築地6‐25‐4/営業時間:10:30~14:00、17:30~21:00/定休日:水
※この時期の営業日・時間については、お店にお問い合わせください
※週刊朝日 2020年5月8‐15日合併号