ただし、罰則規定なしでやりきるには、その前提として、政府が国民から信頼されていなければならない。

 その意味では、安倍首相は、森友・加計疑惑や桜を見る会を始め、国民の強い不信を招く出来事を連発するなど大問題である。

 桜を見る会など、あきらかに税金の私物化である。昨年11月に共産党の田村智子議員が、桜を見る会のとんでもない事態を露呈させた後、私は自民党の幹部たちに怒りの質問をぶつけた。

 かつての自民党であれば、政府が公表している開催要領の招待範囲とはかけ離れた、安倍首相の後援会の関係者が多数招待されていることがわかれば、いずれかの自民党幹部が「安倍首相おやめなさい」と忠告し、安倍首相が応じて、それで終わったはずであった。

 ところが、どの幹部も忠告せず、それどころか安倍首相に倣って、自分たちの後援会の関係者たちをどんどん桜を見る会に送り込んでしまった。これでは党ぐるみの税金の私物化である。とんでもないことだ。そう問うと、誰もが「田原さんに言われるとまさにそのとおりで、弁解の余地もない」と頭を抱えて恐縮した。

 幹部たちの述懐を聞くと、このような事態になったのは、どうやら長く内閣が続いて自民党の幹部たちの神経が緩みすぎた、ということのようだ。この国を健全にするには、どうすればよいのだろうか。

週刊朝日  2020年5月22日号

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