田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 (c)朝日新聞社
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数 (c)朝日新聞社
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イラスト/ウノ・カマキリ
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 緊急事態宣言について、欧米各国のように罰則を設けるべきか。ジャーナリストの田原総一朗氏は罰則規定には反対だが、前提条件をつける。

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 政治学者の中島岳志氏が東京新聞(4月28日)の論壇時評で、「コロナ危機に直面する中、日本では『緊急事態宣言』待望論が巻き起こった。感染者数が拡大する中、腰の重い安倍内閣に対して、リベラル派の人たちが『政府は何をやっているのだ!』『生ぬるい!』と強い力の行使を訴えた。ヨーロッパでもリベラル派のリーダーたちが市民監視の強化を叫んだ」と書き、哲学者ジョルジョ・アガンベンの「権力は集団的パニック状態を生み出すことで、より強い権力行使を待望する心理状態を醸成している。これに権力が呼応することで例外状態が常態化し、権力発動に歯止めがきかなくなる」とする警告を紹介して、「自由制約の常態化に注意せよ」と強調している。

 津田大介氏も朝日新聞(4月30日)の論壇時評で、「歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリは今回のコロナ禍が世界に不可逆的な変化をもたらすと指摘した上で、(1)『全体主義的な監視』か『市民の権限強化』か、(2)『国家主義的な孤立』か『世界の結束』か──人類が直面する二つの重要な選択について問いかけている」と紹介して、ハラリは(1)について、「監視技術を受け入れる代わりに政府に徹底した情報公開を求めることで市民が力を発揮できる道を目指すべきとする」。(2)については「世界が結束することで『新型コロナに勝利するだけでなく、21世紀に人類を襲うであろう様々な病気の大流行や危機にも勝利することができる』と、力強く各国が連帯することの必要性を説いた」と強調している。

 津田氏もハラリの主張に賛同しているわけで、私は中島、津田両氏に心底から共鳴している。

 ところで、新型コロナ危機に対する緊急事態宣言である。欧米各国はいずれも違反に対する罰則規定があるが、日本にはない。そこで罰則規定を設けるべきだという意見が強まっているのだが、私は前回も記したように反対である。中島、津田両氏も同意見だと思う。

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