私自身はありがたいことに働くこと、学ぶことにはそこまで制限を受けてきませんでしたが、エンターテインメントという部分では、音楽が聴きたくてもライブハウスはバリアフリー設備のないところが多く、たとえ誰かに抱えてもらって会場に入れても、オールスタンディングのことがほとんどで所在がなかったり、危険だったりして、楽しむのは難しかった。
当事者たちはリモートワークやオンライン教育、オンライン配信の導入を強く求めてきました。オプションさえあれば困る人を減らすことができるのに、少数派の意見は聞いてもらえませんでした。でも、いま多数派の人たちが困ったら、急激に世の中が変わろうとしている。だから少しでも多くの方に、一部の人々が抱えてきた困難を自分事としてとらえてもらいたいと、あのブログを書きました。
もちろん、しんどい思いをしてきたのは障害や病気を抱える人だけではありません。
志村けんさんが亡くなられて、私たちが非常に胸を押しつぶされたのが、コロナで亡くなると家族であっても死に目に会えないということ。それは、同性婚ができない同性カップルの方々がこれまで抱えてきた悩みに通ずるものです。彼らはご遺族の意向によっては葬儀に参列させてもらえないこともある。ここ数年、同性パートナーシップ条例を作る自治体も出てきましたが、まだ一部。最期のお別れができないことがこんなにも悲しいことであるなら、制度を変えようということにつながっていくと思うんですよね。
今回、コロナの影響で多くの人が、これまで制限を受けてきた方たちの疑似体験をすることになり、その不便さ、つらさを身をもって体験したと思います。そこから思いをはせてもらい、コロナ後に選択肢が多い社会が実現すればと願っています。
(構成/編集部・深澤友紀)
※AERA 2020年5月18日号