若い男性に多い腰椎椎間板ヘルニア。基本は保存療法だが、最近は高齢患者の増加に伴い、手術が必要なケースも目立つ。どんな手術法がおこなわれているのか、一般の人には少しわかりにくいヘルニア手術の最新事情を紹介する。
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腰椎椎間板ヘルニア(以下、ヘルニア)の手術は、道具の進化とともにからだへの負担が少ない低侵襲化へとシフトしている。顕微鏡や内視鏡などの小型カメラの登場で、背中を大きく切開しておこなう開窓術を選択することは減り、今は、モニターに拡大されて映し出された患部を見ながら実施する内視鏡手術が主流だ。
ヘルニアの内視鏡手術で注目されているのが、PED(経皮的内視鏡下椎間板摘出術)と呼ばれる手術法。FESS(全内視鏡下脊椎手術)ともいう。日本整形外科学会の調査によると、内視鏡を用いた手術数は年々増え、5年間でほぼ倍に。2017年には年間2万件あまりの手術がおこなわれているが、14年以降、急に増えているのがPEDだ。
年間400例ほどPEDを実施している出沢明PEDクリニックの出沢明医師は、その背景にあるのは手術器具の進化だと話す。
一般的に内視鏡手術は、皮膚を少し切開した後、そこからカニューラという筒状の器具を挿入し、その細い筒のなかに内視鏡やヘルニアを摘出するための鉗子などを入れ、操作していく。
■背骨削らず低侵襲 感染リスクも減
「PEDの場合は筒の幅が6~8ミリと狭い。直径2ミリの超小型の内視鏡ができたことで空間ができ、操作がしやすくなった。この技術の進化によってPEDが急速に普及し、ヘルニア手術に取り入れる医師が増えてきたのです」
PEDの特徴の一つは、椎弓という背骨の一部を削らなくてもすむ点だ。開窓術や、後述するMED(内視鏡下椎間板摘出術)では、ヘルニアまで器具を到達させるために椎弓を削るが、PEDのカニューラは細いため、脇腹あたりから挿入し、背骨と背骨の間にある椎間孔という狭い空間に通すことができる。