「10の法則」はどれも重要なものなので、どれか1つを抜き出して「これ」と挙げることは難しいのですが、あえていえば1から3の「不可視であれ」「シームレスであれ」「目的地であれ」です。どの業種においても重要な、いわば必須科目と言えそうです。

「不可視であれ」というのは、「こんな新しいテクノロジーを使っているよ」と誇るのではなく、消費者にとってごく自然に受け入れられるような形でリテールを構築していく必要があるということ。

「シームレスであれ」とは、消費者にとってネットで買うかリアル店舗で買うかは大きな違いはないので、ネットとリアル店舗の双方で、壁を感じさせないシステムの構築が必要だということ。

 そして「目的地であれ」とは、リアル店舗を消費者とブランドとの創造的な出会いの空間へと進化させるということ。そのためには、リアル店舗を、製品と結びついた経験だけではなく、知識を深め、魅惑と出会えるような空間にしなければいけません。

――アフター・コロナの時代、リテールにはどのような変化が起こるのでしょうか。

 アフター・コロナで何が起きるかというと、企業活動のすべてにおいてリテール、4Pでいえばプレイスがますます重要になるということでしょう。コロナ危機によって、消費者の購買行動には劇的な変化が生まれました。しかし、その中にあってもリテールは決して止まっていないという事実です。生活必需品を買いにスーパーに出向くのはもちろんですが、外出自粛によって有名レストランが宅配を始めたり、産地直送の利用が急増したりしています。これらはすべてリテールです。しかも多くの場合、デジタルが絡んでいます。リテールは止まるどころか、進化しているのです。

 コトラーらは今回のような危機を予見していませんが、リテール4.0で指摘しているのは、デジタルがリテールを激変させるということです。その結果、ネットがリアル店舗に取って代わるのかというと、そうではありません。アディダスがボストンに開設したショップ兼ミュージアムやニューヨークのサムスン837などが好例ですが、コトラーらはリアル店舗を販売拠点から「経験拠点」に変化させるべきだと説いています。

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コロナ危機で明らかになったことは…