リテールは4つのPのうちの「Place」に相当します。これら4つのPは、企業が狙うターゲットに向けてフィットさせなければいけませんし、4つのPの間での調和も必要です。したがって、4つのPは有機的に結びついてはいますが、守備範囲という点では識別が必要です。リテールとはあくまでマーケティングの一分野であって、リテール=マーケティングといった混同をしてはいけません。

 マーケティングにおける4つのPは、時代時代によってクローズアップされる分野が異なってきました。たとえば、コンビニエンスストアやディスカウントストアなどの小売業態が生まれた頃は、プライスが注目されていました。2000年前後には、ケビン・ケラーやデービッド・アーカーらの活躍もあり、プロダクトの1つであるブランド論が一世を風靡しました。2010年代前半には、モバイルの普及に伴い、プロモーションが議論を呼んでいます。

 2010年代後半からは、消費者への販売拠点をリアル店舗とネットの双方を用いていかに構築していくかというリテール戦略に注目が集まっています。つまり、プレイスに含まれるリテールは、マーケティングの領域の中で今、最もホットなテーマだといえます。

――「デジタルトランスフォーメーション時代の10の法則」とは、どういったものですか。

 コトラーとスティリアーノは、デジタルトランスフォーメーション時代のリテール戦略に重要な要素として、以下の10項目を挙げています。

(1)不可視であれ
(2)シームレスであれ
(3)目的地であれ
(4)誠実であれ
(5)パーソナルであれ
(6)キュレーターであれ
(7)人間的であれ
(8)バウンドレスであれ
(9)エクスポネンシャルであれ
(10)勇敢であれ

 これらは「AならばBである」というような関係性について説明した法則というよりは、今のITの時代に求められるビジネス上の視点、あるいは指針であると考えてください。「10項目で示されているようなマインドを持ってリテールに取り組むべきだ」ということです。

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「10の法則」で特に重視すべきは…