東日本大震災後、宮城県石巻市雄勝町の復興支援を行う、事業家兼漁師の立花貴氏が、作家・林真理子との対談のなかで、自身の経歴を振り返った。
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林:もともと立花さんはエリートで、東北大を出て伊藤忠にお勤めだったんですよね。そういう経歴って、今いろいろお仕事をするときに、ものすごく信用度を増しません?
立花:それはありますね。
林:立花さんの初めての著書『心が喜ぶ働き方を見つけよう』を読ませていただきましたが、伊藤忠に入ったときから、5年でやめようと思っていたってほんとですか。
立花:はい。入社式でもトップの前で生意気にもそう言ってしまいまして(笑)。5年しかお世話にならないと決めていたので、どう恩返しできるかということばかり考えていました。
林:そのあとファミリーマートに出向されたんですね。
立花:入社4年目のときにファミリーマートに出向させてもらい、そこで勉強させてもらいました。その段階で伊藤忠をやめると決めた期日まであと2年あったんです。ファミリーマートに出るときには、もう伊藤忠に戻るつもりはなかったから伊藤忠のバッジも名刺も返して。
林:そして、予定通り、2年でやめたんですか。
立花:いえ、1年ずれて、結局ファミリーマートに3年いました。それで伊藤忠を正式にやめましたが、やめることだけ決めていて、何をしたいのか決まっていなくて、まず知り合いの飲食店を手伝ったんです。そこでの経験では食品の仕入れが大変だと思って、個人の方々の飲食店の仕入れを一手にまとめるような、コンビニみたいな仕組みをつくれないかと思い、古巣の伊藤忠に相談に行ったんです。そのとき伊藤忠は大手の外食チェーンの商品調達と物流を担っていたので、「こういうモデルでやりたいと思うので、仕入れの調達能力を貸してください」と言いました。
林:やめた会社に?
立花:ええ。伊藤忠は懐が深いというか、「おもしろい」と出資してくれました。食品メーカーの方々には伊藤忠のグループ会社のように思われたからか、25社ぐらい取引してくれて、資本金2億2600万からスタートしたんです。それから増資、増資で資本金7億ぐらいになりました。

※週刊朝日

 2012年4月27日号