パルコの広告では淫靡と退廃をふりまき、「雨音はショパンの調べ」で時代のミューズになりながら、ある日きっぱりと姿を消した。そして四半世紀。女性誌の表紙で穏やかな微笑みを湛えて復活すると、いま、長い子育ての時間にも枯れなかったファッションへの思いを携えて歩き始めている。AERA 2020年5月18日号に掲載された「現代の肖像」から一部紹介する。
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自然光が降り注ぐ東京湾に面したスタジオで、小林麻美(こばやし・あさみ 66)は25年ぶりにカメラの前に立った。スタッフは自分よりずいぶん若かったし、カメラはデジタルになっていたが、スタジオの雰囲気も、連続するシャッター音も、昔のままだった。
1970年代からモデル、歌手、俳優として活躍し、80年代には時代のミューズとして一時代を築いた小林が、突然の引退から四半世紀ぶりにマガジンハウスの雑誌「ku:nel」の表紙で復活したのは2016年7月。小林は代名詞ともいえるイヴ・サンローランの黒のスモーキングジャケットとタキシードパンツを纏い、穏やかに微笑んでいた。
「この時一番感じたのは、ああ、私はこの仕事が好きなんだということ。スタッフが集まりページを作り上げていく、クリエイティブな場に参加することが好きだったんだということを確認しました。サンローランの服は上品と下品が紙一重で、きわどくて魅力的。引退した後も、これが着られる自分でいたいと思っていました」
発売日まで極秘にされた小林の「ku:nel」での復活は大きな話題となり、かつての小林を知る世代には東京が輝いていた時代の記憶を想起させ、初めて小林を知る世代には大人世代のリアルな女性として新鮮に受けとめられた。
今年3月に刊行された小林の評伝『小林麻美 第二幕』の著者、延江浩(のぶえ・ひろし 62)は小林の復活についてこう語る。