松任谷:適度にね。もとはコンサバですよ、すごく。

林:それはわかります。結婚生活もきちんと続けられて、いい奥さんでいらっしゃって。

松任谷:なんで結婚って続いたんだろうと思うと、まず、離婚が嫌いだったということがあるね(笑)。「リコン」というサウンドが嫌いとか、そういう生理的なものに尽きるんじゃないかな。

林:私は、ユーミンって自他ともに認める女王だと思うんだけど。

松任谷:私も女王だと思う。体質的に「女王」ってことに耐えられなかったら務めていけないから。

林:女王がどうしてマゾなのかよくわからない。結婚生活において?

松任谷:生活もそうだし、お客の前でマゾです。サービス業じゃないけど、ステージで、これでもか、というぐらいサービスする。マゾになることによって客のサディスティックな感情を増幅させて後戻りさせない。私のサービスじゃないと納得させなくする(笑)。

林:オ~ッ。「私たちをもっと興奮させてー! 高めてー!」という要求を、「わかりました」と引き受けなきゃいけないわけですね。

松任谷:うん。でも、生身でたった一人で引き受けてるわけではなく、システムがあるし、それをつくってこられたことが重大なんじゃないかなと思うね。

林:数万人の視線が一人の肉体に向かって注がれるわけでしょ。あれに耐えられるのってすごいと思う。

松任谷:またそれに磨かれるということもあるしね。

林:だから、このプロポーションができあがるわけですね。

松任谷:それも一つの要因かもしれない。

林:プロポーションも含めて、「ユーミンは努力の人」って言われるのはどうですか。

松任谷:好きじゃないけど、努力できるということが才能かな。努力って意識しちゃうとできないものだから、楽しめてるというか、選べてるということだと思う。

林:ユーミンって、褒められることがほとんどで、けなされること、ほとんどないでしょ。

松任谷:ねたまれることはあると思いますよ。けなされるにしても、ねたまれるにしても、マイナスベクトルであることは確かだからね。どういう職業の人でも、ひとかどの人は、出てきた分だけ、同じマイナスエネルギーと相殺してきたんだと思うけどね。

週刊朝日  2020年5月29日号

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