その結果、転売も横行した。
今年2月、公益社団法人「姫路観光コンベンションビューロー」(姫路市)が1カ月限定で販売した姫路城の御城印は、発売当初は購入制限がなく、販売開始から10日間で売り上げは1万枚を超えた。同法人では「転売禁止」と明記していたが、1枚300円がフリマアプリでは2千円以上の高値で売られるケースも。希望者に行き渡らなくなる恐れが出たため、2週目から1人3枚までと決めたという。
「本来ならば姫路城のよさを知ってもらった上で購入してほしかった。残念です」(担当者)
日本最大級の城専門情報サイト「攻城団(こうじょうだん)」団長の河野武(こうのたけし)さん(45)によれば、全国津々浦々、今や280近い城や城跡で御城印が発行されているという。
「もともとお城には現地ならではのお土産が少ないこともあり、来城した記念に購入して帰るグッズにみんな飢えていました。そこに御城印はハマったと思います。300円前後で購入できること、かさばらないこと、それぞれに個性があってあとから見返しても楽しめます。また販売する側にとっても原価が安いので、双方にメリットがあることから一気に普及したと考えます」(河野さん)
先の隠居音屋KKさんが御城印にハマったのは3年前。元々歴史と戦国武将が好きで、武将ゆかりの地の御朱印巡りをしていた。そんな時、彦根城(滋賀県彦根市)で御城印に出合った。
「大げさに言えば、未知との遭遇。神社寺院の参拝の証しとして御朱印があるのだから、城に参城、登城した証しがあってもおかしくはないというのが正直な感想でした」
と、隠居音屋KKさん。
楽しみ方は、登城する前に御城印を買い求め、城や石像を背景に自撮りしてツイッターに上げること。ツイッターには「御城印界」なるものがあり、先陣争いの様相があるという。
「例えば、どこそこで新規の御城印が出るとわかると、朝早くから並んで一番に御城印を入手しツイッターにアップします。個人的には『一番槍争い』と呼んでいて、一番槍の功名を遂げた時は『一番槍、頂戴つかまつった!』という気分です(笑)」(隠居音屋KKさん)
(編集部・野村昌二)
※AERA 2020年5月25日号より抜粋