ニューヨーク育英学園の教師たちが「児童はもちろん世界に元気を届けよう」とオンライン合唱。曲は、WANIMAの「ともに」(写真:ニューヨーク育英学園提供)
ニューヨーク育英学園の教師たちが「児童はもちろん世界に元気を届けよう」とオンライン合唱。曲は、WANIMAの「ともに」(写真:ニューヨーク育英学園提供)
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 ニューヨーク州から外出禁止令が出されてすぐにオンライン授業の準備を始め、わずか8日間で学校と各家庭をオンラインでつないだ。AERA 2020年5月25日号は、日本よりいち早く対応したニューヨークの日本人学校の取り組みに注目する。

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 米ニューヨーク育英学園全日制小学部主任の中村健人さん(33)は、約100人の教師がひと月足らずでオンライン授業をできるよう導いた。マンハッタンなどにある3校を含めたすべての教師を束ねたのだ。同校はGoogle Meetを使用し、4月2日から本格的にオンライン授業を開始、全日制(月~金曜)の学校では全児童が参加している。授業時間は30分単位に設定して児童が疲れづらいようにするなど、時間割も工夫されている。

 オンライン授業というと難しく感じるが、中村さんは「会話と板書さえあれば可能です」とあっさり言ってのける。

 塾の講師時代に遠隔授業をした経験が生きた。ソフト等を扱う手順が少しでもわかりやすいよう、教員向けのレクチャー動画をまずは制作。「ベテランの先生が『教えて!』のスタンスでいてくれたので助かった」と振り返る。

 中村さんから教えを受けた4年生担任の竹山輝(ひかり)さん(27)は「最初は不安だったが、プレ授業を経たのがよかった」と話す。他教師が子ども役となって交代で模擬授業をし、互いに修正し合った。

 中村さんは日本の現状も知っていた。ICT教育が格差を生む。ネットリテラシーが徹底されないと危険──。

「全員を足踏みさせるのではなく、ひとりでも救えるよう、ぜひ考えてほしい。オンラインゲームで見知らぬ人と交流する子もいますが、ネットリテラシーもオンラインを経験してこそ学べる」

「ポップアップ広告はクリックしてはいけない」など、リテラシーに関しては授業の中で具体的に伝えている。(ライター・島沢優子)

AERA 2020年5月25日号