個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。
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巣ごもり期間も、いよいよ2カ月近くになってまいりました。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。佐藤二朗でございます。
本当にこんなことを言うのは今更なんですが、僕の顔は大きいんですね。ええ。すごく大きいんです。なので、僕の顔の大きさに見合うマスクがなかなかなく、それゆえにマスクをする習慣がほぼ皆無だった僕が、この2カ月弱の間は、外出する時は百パー、マスク。近眼の僕は普段はメガネなのですが、マスクをしてメガネだとメガネがくもりがちなので、わざわざコンタクトレンズにしてまでマスク。あんなにマスクをするのが苦手だった自分に、ここまでマスクをする習慣が身につくとは思いもよりませんでした。人生、本当に何が起きるか分かりませんね。ええ。もちろん顔の大きさは相変わらずです。顔は大きいままです。当たり前だろ馬鹿野郎。
さて、理不尽にキレたところで、この2カ月弱、巣ごもり期間により起きた変化を軽くおさらいしてみましょう。
まず、髪が伸びました。ヒゲも伸びました。どちらも伸び放題です。僕の妻は、僕の耳掘りが大好きで、「あ~あ、君の耳が五つくらいあったらいいのに」と無茶な要求を真顔でしてきた話は佐藤家ではあまりに有名ですが、どうやら人の髪を無責任に切ることも好きらしく、ここ最近、僕の伸びきった髪を見つめながら、妻の目はランランとしています。鈴木蘭々です。そんなことを言っている場合ではありません。半ば恍惚とした表情で僕の頭髪を見つめてきます。
しかし、こちとら一応は人前に出ることを生業にしておりますから、無責任に切られてはたまったものではありません。背に腹は代えられません。代わりの餌食として、息子(8)を差し出しました。大丈夫だ、息子よ。君はまだ小学生だ。母親に散髪され、前髪がパツンパツンになるのは、小学生の定番メニューだ。大人の階段を昇る通過儀礼だ。