死亡手続きを集約した主な自治体 (週刊朝日2020年6月5日号より)
死亡手続きを集約した主な自治体 (週刊朝日2020年6月5日号より)
役所の手続きの主なポイント (週刊朝日2020年6月5日号より)
役所の手続きの主なポイント (週刊朝日2020年6月5日号より)

 家族の死後には、煩雑な手続きを一日がかかり。役所で複数の窓口をたらい回され、重複した内容を記入するなど労力を要する。そんなイメージが、自治体による「専用窓口」導入で変わりつつある。便利で時間の短縮になり、コロナショックで心配な「3密」を避けることにもなる。大きく変わる役所の窓口の活用法を紹介しよう。

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 専用窓口を設ける自治体には、企業の手を借りるところもある。

 19年11月に「おくやみ窓口」を設けた宮崎県都城市は、大日本印刷が開発した「ナビ付申請書」のシステムを導入。15課にわたる最大70以上の必要な書類を一括してつくれるようにした。

「手続きにかかる時間が短くなっただけでなく、全部すませたかどうかの不安もなくなったと好評です」(担当者)

 大日本印刷のシステムは、職員が画面上の案内に従って聞き取った情報を入力する仕組みだ。記入ミスや漏れを防ぐ効果もある。

 東京都板橋区なども同社のシステムを導入し、転居や離婚といった複数の手続きに対応している。

 岐阜県高山市は20年1~3月に、ソフトウェア開発会社「サイボウズ」(東京都中央区)の業務管理システムを試験した。市民からの問い合わせなどをクラウド上で管理・共有できる機能で、「おくやみ窓口」も実験。25の関係課にわたる手続きを一つの窓口に集約し、市民の待ち時間を最大約4割減らせたという。年内の運用開始に向けて調整している。

 厚生労働省によると、18年の死者数は全国で約136万人。20年間で1.5倍近く増えた。一人暮らしの高齢者も目立ち、今後は家族や親族でも、生前の状況を十分把握できないケースが増加するとみられる。

 神奈川県横須賀市や新潟県長岡市、静岡県熱海市などでは、一人暮らしの人がお墓や緊急連絡先、遺言の保管場所などを登録できる事業をしている。横須賀市の北見万幸・福祉専門官はこう意気込む。

「生前の備えと、おくやみコーナーのような亡くなった後の支援をうまくつなげられれば理想的です。今はどちらもしている自治体は限られていますが、孤独死が増えるなか、市民のためにやれることはどんどんやっていくべきです」

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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