分析結果が気になるところだが、山川准教授は「換気をすれば飛沫感染のリスクは大幅に減らせる」と話す。換気して外の空気を室内に取り込めば、同じだけの内部の空気が外へ出ていくからだ。たかが窓開け、されど窓開け。山川准教授によると空間の両側の窓を開けて風の流れをつくることで、空気を入れかえる効果がより高まるという。鉄道各社も列車の窓を開ける換気対策を行っている。

 前出の久住医師が、これらの感染防止策以上に重要だと話すことがある。それは、感染者を「悪者」とみなす風潮を変えることだ。

「感染爆発を防ぐために必要なのは、感染者をできるだけ早く見つけ出して集団内に広げないことです。しかし、体調が悪いと言い出せない雰囲気や感染者を悪とみなす風潮がそれを妨げています」

 感染者差別は流行期から大きな問題になってきた。感染したら周囲に顔向けできないと感じる人も多い。久住医師の元に診察に来る患者のなかにも感染していることを恐れ、検査を嫌がる人がいる。聞くと、会社の社長が「コロナに感染した奴はクビ」「万一消毒が必要になったら費用を負担させる」などと発言しているという。

 新型コロナは無症状、あるいは発症前の感染者が他人にうつすケースも指摘されていて、すべてを早期に見つけ出すのは難しい。だが、体調不良を押して外出したことで感染が広がることも多いとみられる。これらは防ぐことのできる感染だ。

「大切なのはとにかく早く感染者を見つけること。軽い風邪のような症状でも少しでも怪しいと思ったら仕事を休んだり在宅勤務に切り替えたりして、診察を受けるべきです」(久住医師)

 新型コロナの確定診断に用いられるPCR検査はたどり着くまでのハードルの高さが指摘されてきた。しかし、最近は徐々に門戸が開かれつつある。仮に検査を受けられなくても、自宅で自らを隔離することはできる。

 緊急事態宣言の間に急速に普及した在宅勤務は、「出勤」か「欠勤」かしかなかったこれまでの働き方に新しい選択肢を生み出した。ポストコロナの新しい生活様式では、「何が何でも出社する」のではなく、少しでも体調が悪いと感じたら在宅勤務を選択する勇気と、それを認める社会のムードが感染の第2波を防ぐカギになる。(編集部・川口穣、ライター・羽根田真智)

AERA 2020年6月8日号より抜粋