帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
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吉行淳之介さん
吉行淳之介さん

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「健康強者と健康弱者」。

【写真】作家の吉行淳之介さん

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【ポイント】
(1)健康強者の人と健康弱者の人がいる
(2)養生の面からいうと、どちらが上でもない
(3)大事なことは自分の生命と向き合うこと

 生まれつき体が丈夫で、風邪をひくことも滅多にないという人がいる一方で、体が弱くて次々にいろいろな病気になってしまう人がいます。言ってみれば、前者は「健康強者」で、後者は「健康弱者」です。強者は強者の論理で自分の体をとらえますし、弱者は弱者の感覚で自分の体と向き合っています。そして「生命(いのち)を正しく養う」という養生の面からいうと、どちらが上というわけではありません。

 健康強者、しかも養生を極めた人で思い浮かぶのは臨済宗の中興の祖、白隠禅師です。禅師は70歳を超えても少しの病を患うこともなく、歯も抜けず目や耳もはっきりしていて、気力は20~30歳代のときよりもはるかに勝っていたといいます。そのうえで、「内観の法」「軟酥(なんそ)の法」というすぐれた養生法を説いた法語『夜船閑話』をのこしました。

 健康弱者で思い浮かべるのは、もう亡くなってしまいましたが作家の吉行淳之介さんです。吉行さんは中学時代に腸チフスで入院、20代の末から30歳にかけては肺結核で療養生活を強いられました。左肺切除の手術を受けてからは、気管支喘息にアレルギー性皮膚炎、円形脱毛症、淋病とうつ病、揚げ句の果てに肝臓がんと、まさに病気のオンパレードです。

 この吉行さんは『淳之介養生訓』(中公文庫)というエッセー集をのこしています。その冒頭にこうあります。

「病気をしないに越したことはないが、しかし生まれてからまだ一度も病気しない、せいぜいカゼくらいしかひいたことがないというような人物には、どこかつき合いきれぬところがある。大人になっても健康優良児風のところがあって、そこがやりきれない」

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