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女性観をこじらせてしまった今村さん(撮影/吉田みく)

 その数、約1700万人。バブル崩壊後の1993年~2004年ごろに高校や大学を卒業した世代は「就職氷河期」と呼ばれ、新卒の就職活動であぶれた非正規社員を多く生み出した。

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 そのうち、政府は35~44歳の非正規社員の約371万人を「中心層」とみなし、3年間で正規雇用を約30万人増やすとの目標を掲げている。

 東京都でフリーランスの編集者として働く今村辰男さん(仮名・44)は、まさに就職氷河期世代の「ど真ん中」だ。

「就職活動はしませんでした。“何をしたい”という意欲が特に湧かなくて……」

 周囲は次々と就職戦線から離脱し、今村さんの世代は希望の職種に就く努力をするよりも、どこでも良いから会社にすべり込めればいいという雰囲気が蔓延していた。そんな風潮に疑問を感じた今村さんは、新卒での就職をあきらめた。

 初めて働いたのはゲームセンターのアルバイト。ゲームが趣味だったこともあり、そこそこ楽しい日々だったが、勤務中にゲームをしているところを店長に見つかり、半年もたたないうちにクビに。

 見るに見かねた友人が、今村さんを知人に紹介。成人向けの本を扱う出版社で契約社員として働くことが決まった。編集業務は初めてだったが、持ち前の要領の良さと仲間に恵まれたおかげで、仕事をすぐに覚えることができた。当時のメモ帳は今でも捨てられない大切な思い出だ。

 その働きが認められ、2年後には正社員となった。そこで10年ほど働いたが、会社の業績不振を理由にまたもやクビ。失業保険をもらいながら、再度“何をしたいのか”を考えたときには、すでに38歳になっていた。

「いろいろと考えましたが、僕がやってきた編集の仕事をするしかないかなと思いました」

 10年間編集者として働いてきた実績から、人脈には自信があった。先に退職した同僚からの後押しもあり、39歳の時にフリーランスの編集者として独り立ちすることを決めた。漫画編集者として売れっ子の作家をつかまえていることもあり、現在では年収が1千万円を超えたという。

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