ワイドショーなどで新型コロナの情報過多になり、少々疲れ気味の人も多いのでは。そんな折にわき上がった「次亜塩素酸」騒動。うっかり間違えないように注意しよう。AERA 2020年6月22日号は、殺菌用途の違いや使用時の注意点などを紹介する。
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消毒用アルコールの品薄が続いている。アルコールを代替する消毒液としてにわかに注目を集めているのが「次亜塩素酸水」だ。次亜塩素酸水は、塩酸または食塩水を電気分解することで作られる、酸性の殺菌力の強い液体。安全性の高さから食品添加物にも使用されている。
よく名前が似ているため混同されがちなのが「次亜塩素酸ナトリウム液」だ。
こちらは家庭用の台所やお風呂の漂白剤の主成分であるアルカリ性の液体で、やはり殺菌効果を持つ。どちらも中に含まれる「次亜塩素酸」がウイルスや菌のタンパク質を酸化・変性することで、病原体を不活化する。
しかし、次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウム液は性質が大きく違うため、使い方には注意が必要だ。
消毒用に使われる次亜塩素酸水は肌と同じ弱酸性のため、手指が触れても大きなダメージを受けることはない。一方、次亜塩素酸ナトリウム液は強いアルカリ性のため、皮膚に触れるとタンパク質を溶かしてしまう。家庭用の塩素系漂白剤に直接手が触れるとヌルヌルするが、それは皮膚が溶けているため。手袋の使用が必須だ。
また一般に、消毒用に用いられる次亜塩素酸水は薄いため、有機物に触れるとすぐにその殺菌効果を失ってしまう。そのため消毒したい対象にスプレーで直接塗布したり、装置からじゃぶじゃぶとかけ流すような使い方をするのが望ましい。アルコールと同様に手指の殺菌や、食器類や子どもが口にする可能性がある玩具などの殺菌にも向いている。
これに対して次亜塩素酸ナトリウム液は、薄めた液を布などに浸して拭くことで、不特定多数の人が触れるドアノブや手すり、便座などを消毒するのに向いている。市販もされているが、家庭用の塩素系漂白剤5ミリリットル(キャップ1杯分)を500ミリリットルの水と混ぜ、約0.05%に希釈すれば代替できる。成分に含まれる界面活性剤も殺菌効果を持つため、ウイルスをやっつける効果は高い。