厚生労働省が、感染者との濃厚接触を通知するアプリの運用を始めた。グーグルとアップルのシステムを使い、個人情報の入力が不要なのが特徴だ。AERA 2020年6月29日号で掲載された記事を紹介する。
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「2週間」に翻弄される日々が続いている。
この数カ月、目にしない日はなかった新型コロナウイルスの感染者数と各地の人出状況。感染者が増えればカレンダーをさかのぼって2週間前の状況を思い出し、街が人であふれれば2週間後を想像して憂う。ウイルスという見えない脅威を前に、この2週間という日数は数少ない頼れる指標でもあった。
日本国内のウイルス拡大は少しずつ落ち着き始め、小池百合子都知事いわく、「自粛から自衛の時代」へと舵を切る。だが、街に明かりが戻っても、有効なワクチン開発の道筋は見えない。第2波が懸念されるなか、厚生労働省が自衛を後押しするための「接触確認アプリ」をリリースした。
ユーザーはアプリをインストールして、Bluetooth機能をオンにするだけでいい。アプリを入れた端末同士が半径1メートル以内の範囲に15分以上存在すると“濃厚接触”として記録する。もし14日以内に接触した相手のうち誰かがPCR検査で陽性となり、自身が感染したことをアプリに入力すると、各自のアプリに通知が届く仕組みになっている。
個人情報の漏洩が起きないよう、氏名や電話番号、メールアドレスは一切入力しない仕組みにした。接触の記録は各自の端末にだけ記録され、14日後には自動的に無効になる。行政機関や第三者が接触の記録を集めたり利用したりすることはないとしている。
政府が目指すインストール率は国民の6割以上。この数字をクリアしないと、感染を抑える効果は得られないという。
接触確認アプリの導入は世界各国で進み、監視カメラやGPSなどの位置情報を組み合わせて追跡する試みも始まっている。だが、アプリの開発が報じられると、情報を取られるのではないかという不安の声が広がるなど、プライバシーと公衆衛生を両立させることは難しい。