「この先どんな歌を歌えるのか? チャレンジし続けられるのか? 見てみたいんです。どこかにある『ぼくの中のロックンロール』を探して、ふとした時に耳にした歌声が、誰かのココロを照らし共鳴し合える……そんなうたを歌える冒険者でありたいんです」
■新たな名コンビ誕生か
もうひとつの新曲『冒険者たち ~エターナルサンシャイン~』は威風堂々としたバラード曲で、これもまたタイトルが象徴的だ。渡辺美里のディスコグラフィにはなかったタイプの楽曲でもある(個人的に、筆者はイギリスの歌手アデルを想起した)。
提供したのはSuperflyの多保孝一。アルバム『ID』で初めて渡辺美里と組み、『Ray of light』『それでも夢見ずいられない』といった楽曲ではっきりと独自性を打ち出して彼女の新たな側面を引き出した現代の名プロデューサーは、この曲でその路線をさらに前に進めた。シンプルで普遍的なメロディ、壮麗なまでのコーラス、今の渡辺美里の声質にふさわしい奥行きのある構成。一歩ずつ踏みしめながら進んでいくようなリズムもいい。アウトロは短く、にもかかわらず余韻があり、これが始まりなのだと予感させる。明確に新しい渡辺美里を表現している曲だ。
多保孝一の持つ普遍的なポップさと現代的なサウンドがかちっとハマったことで、渡辺美里の歌声は、これまでにないほどの自由を得て伸びやかに響く。かつて世間は、小室哲哉との関係を「ゴールデンコンビ」、大江千里との関係を「プラチナコンビ」と呼んだ。多保孝一との関係は、それに続く新たなコンビ(ダイヤモンドコンビ?)になるのかもしれない。
『冒険者たち ~エターナルサンシャイン~』は、次のような歌詞で締め括られる。
凛として 歩もう
冒険者たちのように
かけがえのない 今
もう一度 旅に出よう
35周年を経てなおも冒険に出ようとする渡辺美里の「シーズン2」が今、始まろうとしている。(山田宗太朗)