例えば、テストでは自然にカップを手に持ちせりふを言ったとしても、本番では急に不自然な持ち方をしてしまうなんてことも。動きや状況を整理して臨んだとしても、本番になったらガチガチになって、思いもしない動きをしてしまうことも多々あって。それは力が入りすぎているということなんです。

 でも、本番はあえて80%くらいの力で臨むことでせりふが言いやすくなったり、お芝居がより自然になったりすることもある。そうした自分自身の変化も、少しずつではありますが、感じられるようになってきました。

 俳優としてだけでなく、モデルや番組MCとしても活躍。自身の5年後、10年後をどのようにイメージしているのだろう。

広瀬:先のことはあまり深く考えてはいないのですが、楽しそうに仕事をできていたらいいなって思います。10代後半から20代に入っての2、3年は、仕事の現場でも日常生活でも「しんどいな」と思うことが多かったんです。その年代特有のものなのかもしれませんが、言葉にならない怒りや、どこにぶつけたらいいのかわからない感情みたいなものが、人よりちょっと多かったのかもしれません。

 でも、一度“底”の状態を経験していたので、あとは上がるだけだった。当時も、その状態から抜けるのをじっくり待っていました。その頃のことは、事務所の社長や友人たちと思い返しては「あの頃のアリスってさ」なんて言って、ゲラゲラ笑い合えるようになりました。

 そんな時期があったからこそ、いまこうして明るく人と接し、楽しく仕事をできているのかもしれません。もっともっと自分が満足できるお仕事ができたらいいなって思いますし、周囲に何を言われても、自分が「これだ」と決めた人生を歩んでいけたら、と思っています。

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2020年7月13日号