新型コロナウイルスの出現は、今までの常識や価値観を一変させた。休業や解雇、賃金カットを迫られるなど誰の身近にも不況が迫り、自分の将来に不安を覚える人は多いはずだ。
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手数料で稼ぐ総合商社、広告費で稼ぐ広告会社なども厳しくなるという。
「クライアントが手数料、広告料を支払う案件をかなり絞り込んでくる。全体をカバーしますという昭和型のビジネスモデルはこれから通用しない。専門性がより求められる」(経済評論家の加谷珪一さん)
一方、ネット導入は学校や予備校、学習塾など教育界でも広がった。コロナによる臨時休校が長引き、その間の授業や講義はオンライン授業が取って代わった。
「これから職がなくなるかもしれない。そんな危機感があります」と不安を吐露するのは、関西の有名私大に勤める准教授(40代の男性)。この男性はオンライン授業に「脅威」を感じているという。コロナの収束後も続く可能性が高いからだ。特にオンライン化が進みそうなのが、複数の学部に同じような授業が設けられ、受講する学生が多い教養科目だという。授業を進めるのがうまい一部の教員にオンライン授業を任せれば、今まで担当してきた教員がいらなくなってしまうかもしれない。
「国内外の優秀な教員の授業がオンラインを通じて簡単に受講できるようになれば、常勤教員もうかうかしていられない」
コロナの影響で、対面取材、記者会見や予定されていたイベントが中止となり、Zoomなどを使ってのリモート取材など、取材の手法の変更を余儀なくされたテレビ、新聞など既存メディアも厳しい。
「旧来モデルで余剰人員を多く抱える大手メディアのリストラは加速するだろう。すでにスポーツ、株式など一部の分野はAIの自動記事に取って代わられている。民放ではAIアナウンサーも登場し、話題になった」(大手メディア幹部)
また外出自粛期間中は休業したり、配本数を絞るよう求めたりする書店が相次ぎ、出版業界に激震が走った。学校の休校で売れ行きを伸ばした学習参考書などを除くと、全体的に紙媒体は苦戦しており、ネット移行などビジネスモデルの再考を改めて迫られている。
テレビタレントや芸能人も、感染防止のためドラマの撮影がストップしたり、番組の収録、放送の仕方が変わったりしたのは周知のとおりだ。
「最近は芸能事務所を独立してオフィスを構える芸能人が増えているようです。所属する大手芸能事務所任せでは10年後には食べていけなくなると考えたのではないでしょうか。YouTubeなどネットで注目を集める手法も目立ち、テレビの限られた枠を奪い合うビジネスモデルに限界を感じている人も多いはず」(前出の加谷さん)
プロ野球やサッカーのJリーグなどはシーズンの開幕が再三、延期に。イベント・競技だけに頼ったプロスポーツ選手は収入の道も絶たれかねない。
コロナの感染拡大で多くの企業や消費者が打撃を受けた。東京商工リサーチによると、コロナ関連の経営破綻は7月3日時点で309件に上る。破綻した会社が多いのは、飲食業や宿泊業、アパレル関連だ。
アパレル大手に勤める40代女性は「かなり厳しい」と打ち明ける。
「緊急事態宣言の解除後も、新宿や渋谷、銀座など主要店の客足は戻りません。アパレル各社は今、夏のセールを前倒しして春物の在庫を売り、何とか売り上げを確保しています。でも痛いのは、店内の『3密』を避けるため思うようにセールを告知できないこと。会社からは冬のボーナスはないと言われています」
5月に経営破たんした老舗アパレル企業のレナウンは、百貨店に依存する従来のビジネスモデルから脱却できなかったことが理由の一つだとされる。百貨店は休業や外出の自粛、渡航制限による訪日外国人客(インバウンド)の減少で4~5月の売上高は約7割減った。
渡航制限で航空各社も深手を負い、なかでも利益率の低い格安航空会社のダメージは大きい。低コスト化には限界もあり、再編統合も予想される。東京商工リサーチ情報部の原田三寛部長はこう語る。
「生き残りの鍵は旧来型のビジネスモデルからの脱却と資本力。財政基盤が弱い会社にアフターコロナに適応したビジネスモデルに転換しろというのは酷です。利益率の低い会社の中には淘汰(とうた)されるところが出てくるかもしれません」
※週刊朝日 2020年7月17日号より抜粋