体内時計は食べ物の消化や吸収、エネルギー代謝など、人間の生命活動におけるリズムを作っている。脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)という部分が“指揮者”としての役割を担い、内臓や血管、皮膚など体のあらゆる細胞が一斉にハーモニーを奏でるようなイメージだ。
視交叉上核の体内時計を動かすのは光、内臓の体内時計を動かすのは主に食事だ。この二つのリズムが狂うと、その働きは弱くなり、メリハリがなくなる。体内時計は血圧や血糖、ホルモンや免疫系にも作用していることから、さまざまな不調や病気にもつながる。
「体内時計を正しく保つためには規則正しい生活をすることが一番。なかでも朝に太陽の光を浴びること、そして起床から1~2時間以内に朝食を食べることが大切です」(同)
とくに糖質には、体内時計を動かす作用があることがわかっている。朝食にはごはんやパンなど、炭水化物を取り入れたほうがいい。反対に、夕食は炭水化物を控えたほうが、体内時計を動かさずに済む。
さらに、朝食による体内時計のリセット効果を高めるためには、前日の夕食と朝食の間隔を10時間以上空けたほうがいいという。
「体内時計を動かすためには、絶食時間が必要です。1日3食の食事スタイルの場合、一番長い絶食時間の後の食事に、体内時計の調整効果が表れると言われています」(同)
たとえば朝食が7時、昼食が12時、夕食が19時であれば、翌日の朝食まで12時間ある。ところが、残業などで夕食の時間が遅れ、22時になった場合、昼食から夕食までの時間が10時間あるのに対し、朝食までの絶食時間は9時間しかない。これでは体内時計はうまく働けない。夕食には体内時計を遅らせる効果があるため、夕食前の絶食時間が長くても、体内時計はリセットされないからだ。
「夕食がどうしても遅くなってしまう場合は分食してください。例えば17時におにぎりを食べておき、帰宅後の21時に肉や野菜などのおかずを食べる。血糖値の急上昇を防げますし、体内時計の乱れを少なくしてくれます」(同)
(フードジャーナリスト・浅野陽子、編集部・中島晶子、藤井直樹)
※AERA 2020年7月20日号より抜粋