アンケートの自由記述からは、「会社」と「読者・視聴者」が求めていることのずれを感じながら、相互監視が進む息苦しい官邸取材のなかで、自分の果たすべき役割に葛藤している状況が浮かび上がった。
・「官邸担当は過度な重要度を背負わされ、政権中枢から情報を取ることがメインの仕事として求められている。それぞれの社全体でジャーナリズムを守る覚悟を決めない限り、望月氏の独り相撲という構図は変えられない。官邸記者が望月氏と同様の振る舞いをして、社からどんな扱いを受けるかよく考えるべきだ。苦々しい思いをしながら、件の申し入れを読んだ官邸記者がどれだけいたか。変革を求められるのは、現場記者より、編集権者だ」
・「望月記者の件は突出しているものの、権力監視のあり方が揺らいでいるのは間違いない。この解決を望月記者の件に依存して論じると、状況の悪化を加速させることになりかねない。本質的な議論をすべきだ」
・「長官の記者会見で、番記者以外が質問すると官邸側が極端にいやがり、結果として番記者のオフ取材に影響が出ることが懸念される。このような事態をどうにか打破しないといけない。情報を取れなくなるのは恐ろしいが、このままではメディアとしての役割を果たせなくなるのではないか。会社にも危機感を持って欲しい」
この結果を踏まえた19年6月のシンポジウムで、官邸記者クラブに在籍していた経験のある毎日新聞の与良正男・専門編集委員は「(現場の記者の)本音、悩み、苦しみは僕にもわかる」と語った。
記者会見など公の場で質問せず、単独で取材する方が評価される風潮が背景にあると解説し、自由記述にある「自身に責任を負わせないで欲しい」といった現場の声について「企業に属した記者・ジャーナリストの難しさがあると想像する」と分析した。
そのうえで、30年間政治記者を務めてきた経験を振り返り、「社の方針と現場の記者の考えが違う時はどうするべきか。記者の考えに会社(の考え)を合わせてやるくらいの気持ちが必要だ」と主張した。