映画は民主党から初出馬する2003年から現在までの、小川さんの17年を追う。監督の大島新さんは数多くのテレビ・ドキュメンタリーを手掛けてきたベテランで、小川さんを追いかけることになったのは、ひょんな縁からだった。

「私の妻が小川さん、お連れ合いの明子さんのふたりと高校の同級生で、『小川君はこんな人がいるのか?というぐらい好青年なんだけど、あっちゃん(明子さん)が猛反対してるのに選挙に出ると言ってるらしい』と聞いて、興味を持ちました。職業柄ドキュメンタリーの企画はいつも考えていますし、政治家を撮りたいとも思っていたんです。ただテレビには報道局というセクションがあって、それ以外の人間が政治家を撮るのは難しい。でも、初出馬なら私でもくいこめるかもしれないと、高松まで飛びました」

 小川さんは香川1区で選挙を戦う衆議院議員。現在、49歳、当選5期目。2003年10月、32歳で総務省を退職して民主党から初出馬した。初めての事務所開きの日、拍手に迎えられて壇上に立ち「ただただ今まで、政治を何か遠いもののように感じておられた、多くの市民の手に、取り戻したい!」と、まるで甲子園で選手宣誓をするかのように大きな声で宣言した。小川さんは元・高校球児だ。

 大島さんは、初めて会ったときの小川さんの印象をこう語る。

「今と変わらないですけど、『国民のためという思いは誰にも負けない』と無私にまっすぐ理想を語る。本当に驚きました。こんな人がいるのか?と胸を打たれたんです。分かるじゃないですか? ただのかっこつけなのか、本気で言っているかなんて。しかも非常に優秀で、話が上手いし、説得力がある。ただ同時に、私がイメージしていた清濁併せ飲むといった政治家像からすると、こんなに青臭くて大丈夫なのか?政界に入ってうまく渡って行けるんだろうか?とは正直思いましたね」

 しかし、初めての選挙は落選する。

「最初はもっと楽に理想を追求しよう、実現しようとスタートしたんです。だけど、やはり落選する。それから政権交代してもあんな形で挫折して国民の期待を裏切る、厳しい選挙が続く、有権者に怒鳴られる、蹴られたりするようなことが続いて、徐々に覚悟が芽生えてきたんですね」

 そう語る小川さんとは、映画に何度も登場する衆議院議員会館の部屋でお会いした。大島さんもご一緒だ。筆者はエンタメ系ライター故に議員会館に入るのも、衆議院議員という肩書の方にお会いして話をするのも初めてだったが、厚労部会とやらが長引いて部屋に戻って来た小川さんは「いやいや、すみません、遅れちゃって」と私たち取材陣にいきなり頭を下げて謝る。映画で見る通りにシュッとしてスマートで、年齢よりずっと若く見える。でも、だから、その分、政治家というより学校の先生のよう。政治家を先生付けするのはおかしいと思うのに、自然と小川先生と呼んでしまった。

 小川先生、都知事選ではどうして小池百合子さんが圧勝したと思われますか? 取材したのは都知事選挙のあった週。最初に聞いてみた。

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