ここまで維新を優遇するのは、安倍総理に事情があるからだ。今秋選挙ができなければ、冬はコロナで解散できず、来年の五輪中止でさらに支持率が落ちれば夏の選挙もできないまま9月の自民党総裁選を迎える。衆議院議員の任期は来年10月。その直前の総裁選は選挙の顔を選ぶことになり、地方に人気の石破茂元幹事長が有利だ。それだけでなく、ポスト安倍の指名権も失い、天から地に落とされて、検察が桜を見る会や森友・加計などの問題を蒸し返してくる可能性さえある。

 一方、今秋選挙を終えれば、来年9月は選挙の心配がない。党員投票は石破氏1位でも、国会議員の決選投票なら、最大派閥細田派(事実上安倍派)と他派閥の領袖たちの談合で、石破回避、岸田文雄政調会長が後継という可能性もある。

 こう考えれば今秋解散は至上命題なのだ。

 では、無理して解散しても自民が大敗で安倍降ろしというリスクはないのか。幸いリベラル野党の準備が整わず地滑り的大敗はなさそうだ。仮に数十の議席減でも、維新が吉村人気で、関西中心に30議席取ると言われるので、最悪、自公に維新を加えた連立で過半数はもちろん、3分の2も狙えるという思惑だ。それには、関西だけでなく、維新に東京圏でも議席を増やしてもらう。そのための都民ファースト小池たたきなのか。

 秋の解散は維新を中心に動いていくのだろうか。

週刊朝日  2020年7月31日号

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など。

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