実は、冷戦が終わって、イタリアもドイツも、そしてフィリピンも、対米地位協定を改定した。
だが、日本はいまだに不平等な地位協定が続いている。
たとえば、民主党の鳩山由紀夫政権のとき、鳩山首相は米軍普天間基地の移設先を「最低でも県外」と強調していたのだが、実は、日米地位協定によって決められている「日米合同委員会」というとんでもない機構により、米側から「辺野古に定めたい」と通達されていて、それを外務、防衛両省の幹部から知らされた鳩山首相は拒否できなかったようだ。もしも拒否していたら、どのようなことが起きていただろうか。
私は、去年の春、安倍晋三首相に、
「イタリアやドイツなどが対米地位協定を改定したのに、日本では占領政策の延長とも言える日米地位協定が続いている。これでは独立国と言えない。トランプ大統領と自由に話ができる日本の政治家はあなたしかいない。しかも、あなたは強い反対の中で、集団的自衛権の行使を認めることで、米国に信用されている。何としても日米地位協定を改定してほしい。できるのはあなただけだ。ポスト安倍ではとてもできない」
と強く求めた。安倍首相は「全力を尽くしてやるつもりだ」と答えた。なかなか難しそうだが、頑張ってほしい。
※週刊朝日 2020年7月31日号
■田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数