TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は韓国映画事情について。
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僕の勤めるラジオ局でも、本誌の表紙やグラビアを飾ったヒョンビンの話題でもちきりだ。「ステイホームも『愛の不時着』があったからこそ乗り切れた」「何度も繰り返し観た」。そんな話で盛り上がっている。
『愛の不時着』は、パラグライダーに乗った韓国財閥令嬢が竜巻に巻き込まれて不時着、北朝鮮の軍人に助けられるところから始まるラブストーリー。設定や筋書きの巧みさはもちろん、僕はそこに描かれた北朝鮮の人たちの日常を知り、興味を持った。貧しいけれど懐かしい。素朴で人情に溢れ、日本でいえば映画『ALWAYS 三丁目の夕日』のようなどこか昭和っぽい雰囲気に癒やされた。
呑み仲間でもあるごく親しい友人で、『パッチギ!』や『フラガール』を世に送り出した映画プロデューサーの李鳳宇さんに韓国映画事情を聞いた。
韓国の若手俳優はデビューして名が売れると日本の東北弁にあたる北朝鮮のイントネーションを習得し、北朝鮮人の役にチャレンジするのだそうだ。いわば北朝鮮人役が登竜門なのだという。
『シュリ』や『JSA』などで、韓国の30~50代が抱いていた北朝鮮のイメージが徐々に変わっていった。「敵」「鬼」「粗暴」といった負のイメージだったのが、映画を観ることで北の人も普通に恋愛もすれば、おしゃれにも興味を持っている、もしかしたら南より人間的に豊かなのかもしれないという意識が増幅していった。そこに今回、待ってました!とばかりにヒョンビンが朝鮮人民軍の若き軍人役で登場した。
軍事境界線に配属されるエリートで、父は朝鮮人民軍幹部であり、若い時にはスイスに留学、ピアノを弾き、男前というハイスペックな北朝鮮の若者を演じ、空前の大ヒットになったという。細部にわたる考証は韓国内に居住する脱北者が受け持った。
Netflixで韓国作品が人気ランキング上位を独占しているのは日本だけではない。香港、ベトナム、シンガポールでもブームが続いている。