国内に45カ所を運営する星野リゾート。新型コロナの発生以降、徹底した感染症対策の上でリゾート施設を運営しながらも、地域貢献や人脈作りにも時間を投じているという。「今回、日本の観光業に足りないものがわかった」と語る星野佳路代表。その真意とは。
異なる流派のねぶた職人が一堂に
「Withコロナの時期に観光業としてできること」を全社的なテーマにし、施設のある日本各地の魅力を発掘して、新たな形での見せ方や楽しみ方を提案しています。毎月、地元の新しい魅力を一つ出す、くらいの覚悟でやっています。
この夏には「奥入瀬渓流ホテル」のある渓流沿いを走るツアーを始めます。使うのは以前、都内でよく見かけた2階建てのオープントップバス。海外の観光客に人気だったこのバスは、インバウンド需要の落ち込みにより出番がなくなってしまったため、青森県の観光バス会社さんを交えて3者で活用方法を考えました。私どもはこの活動を通じて、地元での新しいつながりを得ると同時に、これまでになかった渓流の楽しみ方を発信し、結果として地域にも貢献することを目指しています。秋の紅葉シーズンには、栃木県でも同じ取り組みを行う予定です。
また青森県の施設「青森屋」では、館内にねぶたを展示することを企画しました。今年は各地で夏祭りが中止になってしまいましたが、青森のねぶた祭りもその一つ。年に一度の制作機会を失ってしまった職人さんたちに、制作をお願いしています。ねぶたにはさまざまな流派がありますが、異なる流派の職人さんたちのねぶたが一堂に会するのは、実は極めて珍しいとのこと。私たちは職人さんと連携しつつ、普段はなかなか作っていただけないような大型作品を依頼し、青森の魅力を新たに発信することもできました。
今こそ地元にプライドを マイクロツーリズムで得られる新たな価値
なぜ地元回帰のような活動を行っているのか、ご説明します。
新型コロナの感染拡大を受け、私たちは「マイクロツーリズム」を提唱しました。いわゆる「ご近所旅」です。これまで観光業界は、市場の大きいインバウンドや大都市圏からの誘致を優先していましたが、外出自粛などを受けマイクロツーリズムにシフトしました。しかし、これが難しかったのです。