3月下旬から休演が続いていた東京・シアタークリエで新作ミュージカルが上演された。客席に観客はおらず、オンラインでの生配信だ。出演した生田絵梨花さんと妃海風さんに、舞台への思いを聞いた。AERA 2020年8月3日号に掲載された記事を紹介する。
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7月11日、東京・シアタークリエで2本の新作ミュージカルが無観客で上演され、ネットで生配信された。プロジェクト名は「TOHO MUSICAL LAB.」だ。
生田絵梨花さん(23)は根本宗子さん(30)作の「Happily Ever After(ハッピリーエバーアフター)」に、妃海風(ひなみふう)さん(31)は三浦直之さん(32)作の「CALL(コール)」に出演した。この企画は制作も型破り。1本の上演時間は30分。脚本の依頼から初日までわずか1カ月しかなく、稽古も10日ほどだった。そんな異例ずくめの舞台に二人はどう臨んだのだろう。
生田絵梨花(以下、生田):自粛期間が明けても舞台だけは一切できないし、見られない。寂しいし、悔しいし、モヤモヤした気持ちを抱えるなかでのお話だったので、本当にうれしくて、うれしくて。
私の出演が決まる前から、根本さんは役に私を想定して脚本を書いてくださったそうなんです。そのおかげでお芝居にも歌にも感情が込めやすかったし、大切に演じようと思いました。
妃海風(以下、妃海):私も舞台の中止が続き、先行きが見えなかったので、また演じられることはうれしかったです。お話を聞いた瞬間、舞台の匂いや空気感が蘇って、アドレナリンがバッと出ました。
無観客での中継には不安もありましたが、お稽古が始まったら、これまでのミュージカルとも映像作品とも違う、今だからこそ作れる新しい舞台を目指していることが分かって、ワクワクの連続でした。
作品には、コロナ禍に翻弄される社会や舞台芸術の現状も反映された。「Happily Ever After」は生田さん演じる少女が夢のなかで青年に出会う物語だ。芝居の冒頭、青年が近づこうとする瞬間、少女は叫ぶ。「来ないで!」「なんだか近づいてはいけない感じがするから」と。「CALL」の舞台は、劇場の廃墟がある森。妃海さんはガールズバンドを組む3姉妹の次女に扮する。無観客ライブを始める妃海さんの第一声はこうだ。