全身の筋力が衰えていく難病「筋萎縮性側索硬化症」(ALS)を発症していた京都市の林優里さん(51)から依頼を受け、2人の医師が嘱託殺人容疑で京都府警から逮捕された事件で謎とされているのは、医師たちの接点だ。その真相が本誌の取材で明らかになった。
逮捕された1人は、弘前大学医学部から厚生労働省の医系技官として勤務後、宮城県で開業した大久保愉一容疑者(42)だ。元自民党国会議員の妻が記者会見を開くなどし、その経歴、「安楽死」にのめり込んだ心情の一部が明らかになった。
一方、もう一人の医師は山本直樹容疑者(43)。山本容疑者は関西出身で屈指の進学校、灘中学校から灘高校、そして東京医科歯科大学で学んだ後、千葉県救急医療センターに医師として勤務したという。
「6年間、一緒に学びましたが、目立つこともなく、おとなしいヤツだった。覚えているのは、中学1年生の時に年齢がなぜか1つ上の13歳で不思議だなと思っていた」(灘中学、高校時代の同級生)
同じ医師を目指すも青森県と東京都という別々の大学だった2人を結びつけたのは、医学の歩き方「Med-Pearls Sharing Project」という勉強会だった。当時のホームページを見ると、大久保容疑者は弘前大学6年生で副総括というナンバー2。山本容疑者は、ホームページのWEB MASTERと記されている。
ホームページには<講義でもチュートリアルでもない、新しい形の学び方「学生発信型学習」により、学年の壁、大学の壁を超えてさまざまな医学のPearlsを共有 Share していくために作られました>と紹介されている。
山本容疑者が感染症の専門家にインタビューしている記事も掲載されている。
<感染症とその魅力や今抱えている問題点と、国の医療について聞きたい>とインタビューした動機を記している。
当時、学生として勉強会に参加していた、医師はこう話す。
「全国の医療系大学に在籍する、熱心で問題意識を持った学生が有志の集まりでした。基本的にホームページやネットを通した勉強会です。たまに、勉強会などで集まることもありました。けど、大久保容疑者と山本容疑者が特別に親しいと感じたことはありません。大久保容疑者は厚労省の技官となり、山本容疑者は千葉で救急救命をやっているということで、みんなそれぞれの道で頑張っているだと思っていた」