

丸山茂樹氏が新型コロナウイルス感染拡大の影響で異例の開催となったアメリカのPGAツアーを総括。そして、あこがれのセベ選手との思い出を振り返る。
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先週号でも触れましたが、アメリカのPGAツアーでは、2週続けて同じ会場で試合がありました。
2試合目の「ザ・メモリアルトーナメント」(7月16~19日、オハイオ州ダブリンのミュアフィールドビレッジGC)は誰もが苦しみました。最終日の平均ストローク数が76ですから。
2週間やるんで、最初の週でグリーンを固めて仕上げてしまうと2週間はもたないんですね。だから1試合目のグリーンは軟らかめで、2週目に追い込むだけ追い込んだはずなんです。ゴルフ場はほんのちょっとした表現の出し方で、あっという間に天使にも悪魔にもなりますからね。ラフもどんどん伸びていっちゃうじゃないですか。終盤になればなるほど、キツくなっていったんでしょう。
そんな中でスペインのジョン・ラーム(25)が優勝して、自身初の世界ランキング1位に立ちました。スペイン人選手の1位は、あのセベ・バレステロス以来2人目だそうです。
セベといえば、僕らが子どものころのスーパースターです。そのあとにスペインからはミゲル・アンヘル・ヒメネス(56)、ホゼ・マリア・オラサバル(54)、セルヒオ・ガルシア(40)といった有名選手が出てきたんですけども、ラームはフィル・ミケルソン(50)が「彼は絶対に世界1位になる素材だ」って言ってデビューしてきました。その通りでしたね。
それにしてもセベはあこがれの選手でした。ガッツがすごくて、あらゆる状況からグリーンを攻めていくファイターでしたね。10種類ぐらいのボールを打ち分けられるんです。ひざをつこうが何しようが、どっからでもグリーンに乗っけてくるっていう。アプローチ、パターが天才的にうまかった。
僕も一回だけ一緒に回らせてもらったことがあるんです。日本のイベントでした。それから彼が僕のことを覚えてくれて、全英オープンで下見に行くと、「ここはこうやって攻めるんだよ」って教えてくれました。それがまた、すごい攻め方なんですよ。まさに職人って感じの人でした。