『グレート・ギャツビー』スコット・フィッツジェラルド著も定番だが、オススメだ。世俗にまみれたギャツビーに集まる人々や、そんな中でも純粋に愛を貫こうとする姿……。

「当人が真剣になればなるほど、ハタから見れば滑稽に映り、時にうさん臭さすら伴う、というのはよくあること。この作品もストーリー自体は結構、馬鹿馬鹿しいですね。しかし、それを一級品の文学に昇華させているのが、作者の力なのだろうと思います」(大塚さん)。

野崎孝訳の新潮文庫版と村上春樹訳の中央公論新社版を読み比べてもいい。

■ 時代小説

 中村敦夫が主役を演じた「木枯し紋次郎」。勧善懲悪的なものではなくクールな紋次郎が人々を救う物語である。その原作を集めたのが『流れ舟は帰らず 木枯し紋次郎ミステリ傑作選』笹沢左保著/末國善己編集(創元推理文庫)。本作もあっと驚くどんでん返しが仕掛けられ、笹沢作品の神髄が味わえる。「人気テレビ作品の原作ですが、推理小説としても優れています」と八重洲ブックセンター本店(東京)の内田俊明さん。

『見返り検校』乾緑郎著(新潮社)は実在した杉山和一をモデルにした歴史小説。検校とは盲人官職の最上級の名称で、鍼灸道を確立した和一であったが、仇として狙われ続ける。

「人間の業と愛憎、苦悩が入り乱れる一大エンターテインメントです」

■ ノンフィクション

 紀伊國屋書店梅田本店(大阪)の小泉真規子さんは、最近話題の近刊を挙げた。『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』(左右社)は緊急事態宣言の中、奮闘して働く77人の日記アンソロジー。

「今回ほど仕事について考えさせられた日々はありません。社会が自粛ムードの中、開いているスーパーにどれだけ感激したことか! みなさん、ありがとうございます」

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ著(新潮社)は、日本人の母(著者)とアイルランド人の父を持つ英国の中学校に通う少年が、人種差別、貧富の差など世界の縮図のような日常を乗り越えていく。

「この本を学生時代に読んでいたら、その後の人生何か変わったかもしれません」

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