コロナ禍の世も、本の世界は遠くない。「これは」とイチオシの作品は? 目ききの書店員たちに尋ね、12ジャンル36作品の回答を得た。今回は文芸、海外文系、時代小説、ノンフィクション、旅、スポーツのジャンルから紹介。活字にご無沙汰していた人もこんなときこそ、Go To 本屋!
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■ 文芸
コロナ禍の社会や、現在と背景が重なる文芸作品とは? HMV&BOOKSHIBIYA COTTAGE(東京)の書店員、新井見枝香さんはこう語る。三省堂書店勤務の頃から<この半年で、いちばんおもしろかった本をたった一人で選び、勝手に表彰>する「新井賞」を主催、注目を集めてきたセンスの持ち主だ。
『クジラアタマの王様』伊坂幸太郎著(NHK出版)は「謎の巨獣が現れて、人間たちが建物の外に出られない状況が発生します。そんな状況下では、誰もが同じ危険に晒されます。人々の様々な反応や行動は、今の状況にリンクします」。
『遠の眠りの』谷崎由依著(集英社)は、大正末期の福井に暮らす女工、絵子の物語。本を読むのが大好きな絵子は、ひょんなことから市内の百貨店にある少女歌劇団の脚本家として採用される。そこで出会ったキヨという団員との淡い恋と厳しい世の中を描く。
「貧しい農家に生まれた主人公が、村を出て、めまぐるしく常識が変わる日本をたくましく生きます。戦争が始まり、人々が我慢したり、失ったりしていくさまは、今の状況にそっくり」
■ 海外文芸
文教堂川口駅店(埼玉)の店長、大塚由郎さんが推すのは『シカゴ育ち』スチュアート・ダイベック著(白水Uブックス)。とかく騒々しい今の世の中から見ると、作家が生まれ育った街が静謐に描かれ、魅力的だ。
「幼少年期の思い出を必要以上に美化していないのが、この作品の良いところ。気取らず、格好つけず、偉そうでもなく描かれた世界に惹かれます」
「これまで(編集部注:2003年訳)訳したなかでいちばん好きな本」と訳者柴田元幸はあとがきに。