日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「熱中症」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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つい先日、営業職の方が熱っぽさと頭痛、倦怠感を自覚され受診されました。マスクを着用しながら、屋外を歩いては、冷房の効いた室内に入ることを繰り返していたそうです。営業を終えてオフィスに戻って検温をしたところ、37度の微熱を認めたため、軽い熱中症かなと思いながらも、新型コロナウイルス感染の可能性も頭をよぎったため、念のため受診したとのことでした。「屋外でのマスクの着用は熱中症のリスクがあると知ってはいたが、マスクを外すことはコロナの流行が落ち着かない限り難しい……」とおっしゃっていました。
さて、8月1日、関東甲信地方の梅雨明けが発表されましたね。8月の梅雨明けは2007年以来の13年ぶりだそうです。梅雨入りしたのが6月11日でしたから、今年の梅雨はなんと1カ月半という異例の長さ。今年の梅雨前線の停滞による長雨や日照不足は、すでに野菜の価格を上昇させるなど影響をもたらしています。
長かった梅雨がようやく明けたと思ったら、いきなり本格的な夏が到来。肌寒く感じる日もあった梅雨の日々から一転して、梅雨明け初日には最高気温が30度を越える真夏日を各地で記録。翌日の8月2日には、全国10箇所以上の地点で最高気温が35度以上の猛暑日を記録しています。
猛暑なのは、日本だけでありません。なんと、北極圏に位置するロシアのシベリア地域全体が、6月20日には観測史上最高を記録するほどの猛暑に襲われたというのです。冬には氷点下68度近くにまで達したこともあるベルホヤンスクという町で、同時期の平均気温を20度以上上回る38度を記録し、高温による深林火災が相次いで発生。シベリア上空で偏西風の大きく蛇行し、南からの暖気が断続的に流れ込んだことが原因のようです。