愛知県豊田市の矢作川豊田防災ステーションの敷地に設けられた、ドライブスルー方式のPCR検査所(C)朝日新聞社
愛知県豊田市の矢作川豊田防災ステーションの敷地に設けられた、ドライブスルー方式のPCR検査所(C)朝日新聞社
この記事の写真をすべて見る

 感染拡大が続くなか、PCR検査のあり方が問われている。国は無症状の人には検査しない方針だが、検査拡充への軌道修正の必要性を専門家は指摘する。AERA 2020年8月24日号で掲載された記事を紹介。

*  *  *

 国内のPCR検査について概要を整理したい。

 まず大きく行政検査と自費検査の二つに分かれる。行政検査は全額公費。保健所と委託契約をしている医療機関が健康保険と公費で実施するものなどいくつかのケースがあるが、必要性が認められない限りはなかなかたどりつけない。一方の自費検査は保健所を通さず、医師も診断上必要と考えていなくても、本人の希望で10割本人負担で受けられる。

 検査の方針をめぐっては、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が7月、無症状の人へのPCRなどの検査について、可能性が高い人を除いて対象にしない方針を示し、現在はこれに沿った運用となっている。

 検査対象とされるのは症状がある人たちと、症状がなくても感染者と濃厚接触があるなど感染の可能性が高い人たちだ。第1波のころは「症状がなければ濃厚接触があっても国の方針に沿って検査をしていませんでした。どこの自治体も同じです」(西日本の政令指定市の担当者)といい、国は一貫して対象を絞ってきたことがわかる。

 こうした仕組みに乗ったうえで、国内でとられてきたのがクラスター(感染者集団)を中心とした対策だ。

英キングス・カレッジ・ロンドンの渋谷健司教授(公衆衛生学)はPCR検査拡充への軌道修正の必要性をこう訴える。

「世界的には4割以上の感染が無症状の人からの感染だと言われています。初期のころはまだよく分かりませんでしたが、症状がある人もない人も唾液中のウイルスの量は変わらないという報告もあります。症状の重い感染者を中心にした日本のクラスター対策は、このウイルスの特性と合わないのです」

 検査の拡充に慎重な意見を持つ専門家からは、検査のキャパシティーや感染者の受け入れ態勢、ロジスティクスの問題の指摘がある。そして、専門家以外には分かりにくいが、注目するべきはPCR検査の精度についての指摘だ。

次のページ